背景とねらい
年内に収穫されるカンキツはウンシュウミカンがほとんどですが、ウンシュウミカンは園地条件等により低糖度の果実が生産されます。近年、ウンシュウミカンの価格低迷が続いており、生産農家の経営は厳しい状況にあります。そのため年内に成熟する高糖度で食味の良い品種の育成が求められていました。現在までに年内成熟の早生カンキツとして「はれひめ」が育成されていますが、高品質果実の生産にはシートマルチ栽培を必要とします。
そこで、露地栽培において、早生で糖度が高く、食味が良い、剥皮良好で食べやすいミカンタイプの品種を育成しました。
成果の内容・特徴
- 「西南のひかり」は、12月上中旬に成熟する早生のミカンタイプ品種で、露地栽培においても果汁の糖度は13%と高く(表1)、減酸は早く、オレンジと「アンコール」を混合した芳香があり食味は良好です。
- 果実は平均180g程度、果形は扁円形で果形指数は140程度です(表2)。果皮は橙色~濃橙色(図1)、厚さは約2.5mmで薄くて軟らかく、剥皮は容易です。果肉は濃橙色(図2)で、肉質は軟らかく果汁量は多く、じょうのう膜は比較的薄く食べやすいです(表1)。
- 花粉の量は極めて少なく、条件により無核果も生産されます(表1)。果肉には機能性成分として注目されるβ-クリプトキサンチンを高濃度含有します(表3)。
- 樹姿は直立性と開張性の中間で、枝梢の長さ、太さは中位で密生します(図3)。葉はやや小さい方です。結実性は比較的良好ですが、隔年結果性がやや高いので、摘果を徹底し、適正な着果量を保つ必要があります。
- そうか病には強く、かいよう病に対しては中程度の抵抗性があります。カンキツトリステザウイルスによるステムピッティングの発生は中程度です。
- 年内に成熟しますので、わが国のほとんどのカンキツ栽培地帯に適します。
品種の名前の由来
九州(西南地方)で育成され、カンキツ産地へ光(ひかり)をもたらす品種になって欲しいという願いから、命名しました。



図1 「西南のひかり」の結実状況(育成地 2005年12月)

図2 「西南のひかり」の果実(育成地 2006年12月)


図3 「西南のひかり」の樹姿(育成地 2007年9月)
用語解説
シートマルチ栽培
ウンシュウミカン等で生理落果期から成熟期まで地表面に白色の透湿性シート敷いて、降雨を遮断し土壌水分を乾燥状態に保ち、樹体水分へストレスを付与して果実の糖度を上昇させる栽培法です。
ステムピッティング
カンキツトリステザウイルスに罹病性品種では、ウイルスの被害樹は木質部(ステム)に窪み(ピッティング)が発生する症状です。