背景とねらい
モモの果肉色には白色と黄色がありますが、日本の生食用品種の多くは白肉であり、黄肉は缶詰用の印象が強く、生食に用いられることはほとんどありませんでした。ところが近年、消費者の品種多様化の要望が高まり、黄肉品種の栽培が増加し、「黄金桃」のように晩生品種の果実が市場にも流通するようになっています。そこで、黄肉品種のシリーズ化を図るため、食味・品質の優れた中生の黄肉新品種の育成を行いました。
成果の内容・特徴
- 樹勢は強く、樹姿は開張と直立の中間となります。枝の発生は多く、花芽の着生も良好です。花は単弁普通咲きで花粉を有し、結実は良好である。開花期は育成地で4月上旬となり、「あかつき」とほぼ同時期かやや遅くなります。果実の収穫期は、育成地で7月下旬から8月上旬となり、「あかつき」より1週間後になります。
- 果実重は220g程度、果形は扁円形で、果皮の地色は黄色で赤い着色が少なく、裂果の発生も少ないため無袋栽培でも美しい黄色の外観の果実が得られます。
- 果肉は黄色で溶質、肉質は「やや密」です。果汁糖度は平均で14%程度に なり、「あかつき」より約1%程高くなります。酸味は少なく、黄肉モモ特有の香りがあり、食味は安定して優れています。
- 花芽が多く、結実が良好なので摘蕾、摘果を適切に行い、果実肥大を促進する必要があります。果面の微細な裂果が発生することがありますが、程度は軽く大きな問題とはなりません。果肉のミツ症の発生が認められるため、適期収穫に努める必要があります。
- せん孔細菌病、灰星病には罹病性ですが、通常の薬剤散布により被害を回避することが出来ます。
- 東北から九州までのモモ栽培地域で栽培が可能です
品種の名前の由来
果肉が黄色で赤い着色が少ないことから、「月の明かり」の意味で命名しました。

図1 「つきあかり」の結実状況

図2 「つきあかり」の果実

用語解説
黄肉モモ
果皮と果肉が黄色になるモモのグループ。1対の遺伝子によって決められている形質で、白肉が優性であり、黄肉は劣性ホモで発現します。缶詰用モモの多くが黄肉だったため、日本では黄肉モモを缶詰用モモと感じる消費者が多く、近年まで生食用品種には稀な性質でした。
黄金桃
黄肉モモ品種の一つで、熟期が遅い。果実が大きく、酸味が少しあり、特有の香りがあることから、しだいに栽培が増え、黄肉モモの主要品種となりました。
あかつき
モモ主要品種の一つ。育成地では7月下旬に収穫される白肉の中生品種で、日本では「白鳳」に次いで第2位の栽培面積を占めています。果肉が緻密で、糖度が高く、食味良好です