背景とねらい
ウメは近年の栽培面積の拡大や中国からの一次加工品輸入の増大などにより生産過剰傾向にあります。また、栽培品種も「南高」や「白加賀」など一部に偏り、出荷時期や用途などが限定されることにより、市場における価格低下の要因の一つになっています。新たなウメ需要を喚起し、ウメ生産の安定化を図るため、ウメとニホンスモモとの種間交雑を行い、果肉色や果実の大きさなど、これまでのウメに見られない新しい形質を付与したウメ新品種の育成を行いました。
成果の内容・特徴
- 樹勢は弱く、樹姿は開張します。1花芽から2~3の小花が発生し、ニホンスモモと同様の花束状短果枝となります。開花期は育成地で3月下旬となり、「南高」より1週間から10日遅く、在来の「李梅」と同時期となります(表1)。花粉がごくわずかにありますが発芽しないため、結実のためにはウメ、アンズ等の花粉を受粉する必要があります。なお、ニホンスモモの花粉では結実は不良となります。
- 結実は「南高」には劣るものの、「李梅」より優れています。収穫期は育成地で7月中旬となり、「南高」及び「李梅」より3週間程度遅くなる晩生種です(表1)。
- 果実重は約70gと大きく、円形で果皮全面に鮮紅色に着色します。果面の毛じは短く光沢のある美しい外観となります(図1、図2)。果肉も成熟に伴い、鮮紅色に着色し、梅酒にした場合きれいな紅色となります(図3)。核は小さく、粘核です。
- 滴定酸度は4g/100ml余りで、「南高」よりも3割ほど少なく、「李梅」と較べてもやや少なくなります(表1)。梅干し製品は、果肉がやや粗いため「南高」に較べて劣ります。
- 自家不結実性で開花期が遅いため、結実安定のため開花の遅いウメ品種もしくはアンズ品種の混植が必要となります。樹勢が弱く、結果枝が下垂するため、1年枝の切り返しを行い新梢の発生と伸長を促す必要があります。また、短果枝の維持が難しいため、予備枝をとり、結果部位の確保することも重要です。樹冠が小さいが密植により、中程度の収量が確保できます。
- 栽培適地は、東北地方から九州までの梅の栽培地域です。
品種の名前の由来
果皮だけでなく果肉も赤く、果汁が紅色になることから、命名しました。

図1 「露茜」の結実状況

図2 「露茜」の果実


図3 「露茜」の果実でつくったウメジュース(左)と梅酒(右)。
紅色の美しいウメジュースや梅酒ができます。
用語解説
小花
一つの花芽から複数の花が分化し、開花に至るときの一つひとつの花を指す。モモ、ウメ、アンズなどは通常、1花芽1花であるが、スモモ、オウトウなどは複数の小花を付けます。
核
モモ、ウメ、スモモ、オウトウなどの核果類の果肉の内側にある硬い核。内果皮が硬化したもので、大きさ、形、紋様などに樹種による特徴があります。
花束状短果枝
新梢の伸びが極めて小さく、短い枝を短果枝と言い、そこに10程度の花芽が着生した場合、開花時に花束状となるため、こうした枝を花束状短果枝と呼びます。スモモ、オウトウなどに特有の結果枝です。
予備枝
短果枝は前年伸びた枝上に次年度に着生するため、短果枝を確保するためには前年度の発育枝を剪除せず、ある程度残す必要があり、これを予備枝と呼びます。