プレスリリース
無加温・少加温施設栽培に適し、糖度が高く食味良好なみかん新品種「津之輝」(つのかがやき)を育成

情報公開日:2007年10月 3日 (水曜日)

要約

果樹研究所では、無加温・少加温施設栽培に適し、糖度が高く食味良好なみかん新品種「津之輝」を育成しました。本品種は、露地栽培では1月中旬から2月上旬に成熟する中生品種で果実の大きさは平均180gですが、無加温および少加温での施設栽培では12月上中旬に成熟して平均250gの大果となります。果皮は赤みがあり剥皮良好で、じょうのう膜も軟らかく食べやすいうえ、糖度は約13%と高く、減酸は比較的早く食味良好で、β-クリプトキサンチンを高濃度含有します。


詳細情報

背景とねらい

カンキツの施設栽培はウンシュウミカンを中心に行われています。

現在、石油価格の高騰により農業生産資材の価格は上昇し、特に施設栽培における燃料費の高騰は著しく、生産費の上昇のほど果実価格は上がらないため生産農家の経営は厳しい状況になっています。

そこで、糖度が高くて食味が良く種なしで食べやすいうえ、生産コストの低い無加温・少加温施設栽培に適したミカンタイプの品種を育成しました。

成果の内容・特徴

  • 「津之輝」は、1月中旬~2月上旬に成熟する中生のミカンタイプ品種で、露地栽培において果汁の糖度は平均13%と高く、減酸は比較的早く、「アンコール」に似た芳香があり食味は良好です。無加温・少加温施設栽培では12月上中旬に成熟し糖度は13%以上となります(表1)。
  • 果実は露地栽培の試験地の平均で180g程度、施設栽培では250g程度になります(表2)。果皮は赤橙色で赤みがあり(図1)、厚さは約3.0mmで薄く、剥皮は容易です。果肉は濃橙色で(図2)、肉質は軟らかく果汁量は多く、じょうのう膜は薄く食べやすいです(表1)。
  • 雄性不稔性を持つために、他品種の花粉が受粉されなければ種なしとなり(表1)、浮皮の発生はほとんどありません。果肉には機能性成分として注目されるβ-クリプトキサンチンを高濃度含有します(表3)。
  • 樹姿はやや直立性を有し、枝梢の長さ、太さは中位で密生します(図3)。結実性、隔年結果性は中位で、果実肥大期の過乾燥により裂果の発生が見られます。
  • そうか病には強く、かいよう病にはかなり強い抵抗性があります。カンキツトリステザウイルスによるステムピッティングの発生は軽度です。
  • 冬季の最低気温が-4°C以下に低下しない温暖なカンキツ栽培地域および施設栽培に適します。

品種の名前の由来

口之津で育成され、特に施設栽培で果皮に光沢のある果実が生産されることから、命名しました。

表1

表2

図1 「津之輝」の結実状況
図1 「津之輝」の結実状況(育成地 2005年12月)

図2 「津之輝」の果実
図2 「津之輝」の果実(育成地 2006年12月)

表3

図3 「津之輝」の樹姿
図3 「津之輝」の樹姿(育成地 2007年9月)

用語解説

少加温施設栽培
施設栽培において暖房に用いるA重油等燃料の年間使用量が10a当たり5キロリットル以下の施設栽培を指します。

ステムピッティング
カンキツトリステザウイルスに罹病性品種では、ウイルスの被害樹は木質部(ステム)に窪み(ピッテイング)が発生する症状です。