プレスリリース
良食味で栽培容易な晩生ニホンナシ新品種「甘太(かんた)」

- 晩生のニホンナシ需要を拡大 -

情報公開日:2013年12月 2日 (月曜日)

ポイント

  • 高糖度で軟らかく良食味の晩生のニホンナシ「甘太」を育成しました。
  • 「新高」と同時期あるいはやや遅い時期に収穫でき、樹勢が強く花芽の着生も良好なことから栽培容易で豊産性です。

概要

  • 農研機構は高糖度で食味が良く、かつ栽培が容易で豊産性の晩生ニホンナシ新品種「甘太」を育成しました。
  • 主要な晩生品種である「新高(にいたか)」1)と同時期あるいはやや遅い時期に収穫する品種です。樹勢が強く、花芽の着生が安定しているため、栽培容易で豊産性です。「新高」より果肉が軟らかく、糖度が高いため、食味が優れるのが特徴です。早生の「幸水」2)や中生の「豊水」3)と比較しても糖度が高い良食味品種です。
  • 「甘太」は晩生のニホンナシ需要を大きく拡大する品種として、南東北から西南暖地まで全国的な普及が期待されます。

予算:運営費交付金
品種登録出願番号:第28388号


詳細情報

新品種育成の背景・経緯

ニホンナシは軟らかい肉質への強い消費者ニーズがあり、それを備えた品種として、早生の「幸水」、中生の「豊水」が普及しています。しかし、「新高」をはじめとする主要な晩生のニホンナシ品種は、それらと比較すると、果肉硬度が高く、硬い肉質で食感が劣り、晩生品種で肉質の軟らかい品種が求められていました。一方、低コストで安定生産でき、栽培しやすい豊産性の品種が望まれています。そこで、果肉が「幸水」、「豊水」並に軟らかい上、栽培しやすく豊産性の晩生品種の育成を目指しました。

新品種「甘太」の特徴

  • 樹勢は強く、枝の発生の多少は中程度です。短果枝4)とえき花芽5)の着生はともに多く、着花は安定しています。収穫期は10月上旬で、育成地(つくば市)では「新高」に近い時期です(表1)。若木(6-7年生時)の収量は「幸水」、「豊水」、「新高」より高く、豊産性です(表1)。
  • 果実の大きさは570g程度と大きい品種です。果肉の硬度は「幸水」、「豊水」並で、「新高」より軟らかく、肉質良好です。果汁糖度は「幸水」、「豊水」、「新高」より高く、甘い品種です。果汁pHは「豊水」、「新高」に近く、酸味が少しありますが、糖度の高さと相まって食味は濃厚です。心腐れ6)、みつ症7)、裂果の発生はみられません(表2)。 日持ち性は「新高」ほど長くなく「豊水」と同程度以上です。
  • 黒斑病8)には抵抗性です。「幸水」、「豊水」、「新高」と同様、黒星病9)に対しては罹病性ですが、慣行防除で栽培できます。

表1 「甘太」の樹体特性
 表2 「甘太」の果実特性 

図1 「甘太」の結実状況
図1 「甘太」の結実状況

図2 「甘太」の果実
図2 「甘太」の果実

今後の予定・期待

「甘太」は、全国33県で試作栽培試験を行いましたが、南東北以南の大部分の県で有望と評価されており、全国的に普及が見込まれます。

品種の名前の由来

「甘太」(かんた)の名は、甘くて、果実肥大が良く(太)、栽培が容易(簡単)であることに由来します。

苗木の販売予定時期

平成25年11月22日に品種登録出願公表されました。苗木は平成26年秋季より販売される見込みです。
お問い合わせ先:農研機構果樹研究所 企画管理部 運営チーム<span class="caps">TEL029-838-6443

利用許諾契約に関するお問い合わせ先

農研機構 連携普及部 知財・連携調整課 種苗係
  TEL 029-838-7390          FAX 029-838-8905

用語の解説

1)新高
現在、ニホンナシで3番目に広く栽培されている晩生品種。全栽培面積の約9%を占める。

2)幸水
現在、ニホンナシで最も広く栽培されている早生品種。ニホンナシの全栽培面積の約40%を占める。

3)豊水
現在、ニホンナシで2番目に広く栽培されている中生品種。全栽培面積の約27%を占める

4)短果枝
数cm以下の短い枝の芽が花芽となったもの。花芽が開花し、結実するので短果枝と呼ぶ。

5)えき花芽
数十cm以上伸長した枝に着生した先端以外の芽(えき芽)の中で花芽となったもの。えき花芽が着生した枝は通常長い場合が多く、長果枝と呼ばれる。

6)心腐れ
果心部が褐変、腐敗する症状。

7)みつ症
果肉の一部が半透明となる生理障害。発生した果実は、ナシでは商品価値が低下する。

8)黒斑病
ニホンナシの主要病害の一つ。主要品種の中では「二十世紀」が罹病性。「幸水」、「豊水」、「新高」は抵抗性を示す。

9)黒星病
現在ニホンナシの最重要病害。主要品種を含め、ほとんどのニホンナシが罹病性である。