品種開発の背景・経緯
近年、菓子類のトッピング素材などとして、カボチャ種子が利用されています。現在、カボチャ種子の多くは海外からの輸入によってまかなわれていますが、安全・安心な国産のカボチャ種子の供給を望む声が強くなっています。ところが、ほとんどのカボチャ品種の種子には厚い殻があるため、殻を剥く作業にコストと時間を必要とするので、カボチャ種子の低価格化に結びつかないのが現状です。カボチャ遺伝資源のうち、ペポカボチャにはハルレスシード(Hull-less seed)タイプ2)の系統・品種が存在するため、この系統を活用することで殻むきにかかるコストをカットすれば種子の低コスト化が可能になるのではと考えました。しかし、既存のハルレスシードタイプの系統は種子の収量性や栽培性が劣っています。そこで、種子収量が多いハルレスシードタイプ品種を育成することを目標としました。
品種開発の内容・意義
- 平成13年度からハルレスシードタイプの中から有望な固定系統を選抜し、平成20年度に「豊平1号」および早生で株元に果実が付きやすい「豊平2号」を育成しました。そして、これらを交配した後代を調査したところ、既存の食用種子カボチャ品種に比べて、種子が多収で、株元に果実が付きやすいことが認められたため、品種名を「ストライプペポ」として、品種登録出願を行いました。
- 主枝(蔓(つる))の伸長は生育初期から中期は緩やかで、生育中期以降から徐々に伸長します。また、側枝数は4本程度と、既存の殻が無い食用種子カボチャ品種「福種」よりも少ないです(写真1および表1)。
- 「ストライプペポ」における雌花と雄花の開花時期は「福種」より早いです。着果節位 は12~14節で、「福種」に比べて低節位で株元近くに結実します(写真1および表1)。
- 果実は球形で、果実生育初期の果皮は緑色ですが、濃緑色の縞が入ります。平均の果実重量は4.4kgです。10a当たりの種子収量は120kg程度であり、「福種」に比べて約2.4倍と多収です(写真2および表1)。
- 「ストライプペポ」の種子は、ペポカボチャの一種であるズッキーニ「オーラム」の殻あり種子を剥いた場合に比べて、サイズが大きいです(写真3)。また、「福種」に比べて細長く、やや厚みがあり、一粒あたりの重量はやや重いです。種子の色は「福種」と同じく、濃緑色です(表2)。
- 果肉は「福種」と同様に、繊維分や水分が多いため、セイヨウカボチャのような調理には向きません。
生産上の留意点
- 「ストライプペポ」は北海道および東北地方といった寒地・寒冷地での栽培に向いています。栽培は慣行のセイヨウカボチャの方法に準じます。収穫は開花後約50日後に行い、収穫後一か月を目途に種子を取り出してください。
- 気象条件、栽培条件等により、株元近くに着果しにくいことがあります。
- 本品種は種子を食用とするカボチャのため、農薬取締法上「サンケイ園芸ボルドー」「イオウフロアブル」「イデクリーン水和剤」を使用できますが、これら以外の農薬は使用できません(平成25年9月1日現在)。
今後の予定・期待
「ストライプペポ」は、食用種子の多収を目指して育成したカボチャ品種です。種子の多収性を活かして、クッキーなどのトッピング素材に限らず、油糧などへの用途拡大が期待されます。現在は、種子の新たな用途に加えて、生食に向かないとされた果肉部位についても、加工業者、大学や研究機関と協力して新たな加工素材として利用を検討しています。新たな用途拡大を通じて、今後の普及が期待されます。
用語の解説
1)ペポカボチャ
カボチャの一種で、学名はCucurbita pepoと言い、現在日本で普及しているセイヨウカボチャ(学名C.maxima)とは種類が異なります。ペポカボチャで日本に普及しているものとしてズッキーニが有名ですが、その他にも果実内の繊維部分を食べる「そうめんカボチャ」やハロウィンに使う飾りカボチャも含まれます。
2)ハルレスシード(Hull-less seed)タイプ
種子に厚い殻(Hull)がない系統のことです。この形質はペポカボチャにのみ確認されています。