プレスリリース
乗用型4輪トラクターの省エネルギー性能評価試験方法を確立

- 「農業機械の省エネルギー性能認証表示制度」の性能評価に採用 -

情報公開日:2014年4月15日 (火曜日)

ポイント

  • 乗用型4輪トラクターのロータリ耕うん時の燃費を型式間で公平に比較可能な試験方法を確立しました。
  • 30a区画のロータリ耕うん作業時の燃費を、試験の再現性の確保が難しいほ場試験ではなく、試験室内や舗装路面上での試験データから推定・算出します。
  • 型式間の比較試験データはユーザーが購入する際の有益な情報となり、省エネルギー性能の高い機械の普及に繋がります。

概要

農研機構は、乗用型4輪トラクターの省エネルギー性能を評価する試験方法を確立しました。

本評価試験方法は、省エネルギー性能の評価指標として用いるため機関出力22~29kW(30~40PS※1)のトラクターに耕幅1.7~1.8mのロータリ作業機を装着して、30a区画を耕うんした時の燃費を推定・算出するものです。

30a区画のロータリ耕うん作業時の燃費は、ほ場の土壌条件を揃えて試験を実施するのは困難なことから、再現性良く取得できる台上PTO※2負荷燃費及び舗装路面上での走行・旋回燃費から算出します。台上でPTOにかける負荷や、舗装路面上での走行・旋回燃費をほ場での走行・旋回燃費に換算する係数は、実際にほ場や舗装路面上で行った試験データから求めました。

型式間の比較が可能な燃費を測定・算出することにより、ユーザーが購入する際の有益な情報となり、省エネルギー性能の高い乗用型トラクターの普及に繋がります。

平成25年度から一般社団法人日本農業機械化協会が開始した「農業機械の省エネルギー性能認証表示制度」の評価試験方法として採用されています。

関連情報

予算:運営費交付金


詳細情報

開発の背景と経緯

近年、温室効果ガスの排出量削減に寄与する省エネルギー(以下「省エネ」)型の機械や装置へのニーズが高まっており、省エネ性能(乗用車における燃費:〇〇km/Lなどの表示)を評価する手法が確立あるいは提案されている分野が多く存在します。その一方で乗用型トラクターなどの農業機械の省エネ性能を型式間で比較し、客観的に評価する手法については確立されていない状況にありました。

こうした中、平成21~22年度に農林水産省補助事業として「農業機械省エネルギー性能評価方法確立事業」が実施され、機関出力22~29kW(30~40PS)の乗用型トラクターと10t以下の穀物乾燥機が省エネ性能評価の対象となりました。生研センターは、この事業の中で省エネ性能評価試験の実施方法の作成を担当し、平成23年度から生研センターの研究課題として評価試験方法の確立に取り組んできました。

評価試験方法の概要

  1. 本試験方法は、機関出力22~29kW(30~40PS)のトラクターに耕幅1.7~1.8mのロータリ作業機を装着して、フルスロットル 、PTO速度段は1速、耕うんピッチ※1は10~16cmの範囲、耕深は12cm程度で、30aの面積を耕うんした時の燃料消費量(以下「 燃費」)を推定するためのものです。
  2. 30a耕うん作業は隣接耕うん(偶数行程、耕うん重複幅10cm)と行程端の180度旋回、枕地耕うん(3周、耕うん重複幅15cm )と区画4隅における90度旋回から成っており、30a耕うん時の燃費(L)はそれらの耕うん時の燃費や旋回時の燃費を全て足し 合わせたものとなります(図1)。
  3. 30aを耕うんした時の燃費(L)は、以下のように推定します(図2)。
    1)ほ場耕うん燃費(L/h)は、台上PTO負荷 燃費、走行燃費、停止燃費から推定します。台上PTO負荷燃費は耕うん時の負荷(トラクターのほ場試験結果から得た、耕うんピ ッチや耕幅に応じた負荷、表1)を台上固定状態でPTO軸にかけて測定します。走行燃費は、ほ場走行に要する燃費を舗装路面上 の走行燃費に係数(R走=1.08)をかけて換算します。
    2)180度旋回燃費や90度旋回燃費は上記の走行燃費と同様に、舗装 路面上の旋回燃費(図3)に係数(R180=1.08、R90=1.07)をかけて換算します。
    3)これらの燃費に、走行速度から得ら れる耕うん時間、180度旋回の回数や90度旋回の回数を掛けることで、30aの面積を耕うんした時の燃費(L)を求めることができ ます。
  4. 機関出力23~27kW(31~37PS)のトラクターを供試した例では、本試験方法によって推定した燃費と、ほ場の耕うん燃費や 旋回燃費から算出した燃費との差は0.3~0.4L(3.2~4.0%)程度であり、推定結果は良好でした。

今後の予定・期待

  • 平成25年度から一般社団法人日本農業機械化協会が実施した「農業機械の省エネルギー性能認証表示制度」の評価試験方法として提案し、採用されました。
  • 型式間の比較が可能となることで、ユーザーが購入する際の有益な情報となり、省エネルギー性能の高い乗用型トラクターの普及に繋がります。

用語の解説

※1 PS:馬力を表す単位で、1馬力は約0.735キロワット(1PS=0.735kW)。日本では内燃機関などに限り使用が認められ、記号PSを用いる。
※2 PTO(パワーテイクオフ):補助装置を駆動する動力を走行用エンジンから取出す装置
※3 耕うんピッチ:ロータリ回転軸が1回転する間にトラクターが進む距離。この値が大きいほど耕うんした後の土塊径が大きくなる。

30a耕うん作業の流れ・30a耕うん燃費の推定方法・台上PTO基準負荷

塗装路面上における180度旋回(左)および90度旋回(右)の試験方法