プレスリリース
高速作業が可能な水田用除草装置実用化に見通し

- 車体中央部の搭載で除草効果が高く、欠株少ない除草装置 -

情報公開日:2014年10月28日 (火曜日)

ポイント

  • 作業速度が速く、除草効果が高くて欠株が少ない水田用除草装置です。
  • 水稲の有機栽培等で大きな課題になっている雑草防除に貢献します。

概要

農研機構生研センターとみのる産業株式会社は、農業機械等緊急開発事業(以下、緊プロ事業)において、作業速度が速く、高精度な作業が可能な水田用除草装置を開発しました。

近年、消費者の安全・安心志向の高まりなどから、各産地で水稲の有機栽培等が推進されていますが、農業生産の現場で有機栽培等を実施、拡大しようとする場合には水田の雑草防除が大きな問題となっています。

そこで、水田の雑草防除に役立つ除草機開発を目的として、比較的小型な3輪タイプの乗用管理機の車体中央部に搭載する水田用除草装置をみのる産業株式会社と共同開発しました。本装置の利用により、最速1.2m/sの高速で、除草効果が高くて欠株の少ない作業が可能となり、有機農業推進への寄与が見込めます。

今後、来年度からの市販化に向け、12月に現地検討会を開催する予定です。

関連情報

予算:運営費交付金

特許:出願中3件 (特願2013-270581、特願2014-4801、特願2014-5534)

詳細情報

開発機の背景と経緯

近年、食への安全・安心の関心の高まりや、環境負荷低減の観点から、農薬の使用量を減らした減農薬・無農薬栽培に関心が集まっており、エコファーマー制度や有機JAS認定制度などが導入されています。 減農薬・無農薬で水稲栽培を行う場合には、雑草防除が大きな課題であり、生産現場では除草効果の高い新しい水田用除草機の開発が望まれていました。

そこで、農研機構生研センターとみのる産業株式会社は緊プロ事業として平成24 年度から、比較的小型で、かつ乗用で使用できる新しい水田用除草装置の開発に着手しました。以後、本年度までに3次にわたる試作と除草効果試験を繰り返 し、性能向上と取り扱い性向上のための改良を進め、このたび実用化の見通しを得ました。農研機構中央農業総合研究センター、国立大学法人神戸大学の協力を 得て、様々な土壌条件での効果を確認するため、島根県農業技術センター、滋賀県農業技術振興センター、岩手県農業研究センター、福井県農業試験場で実証試験を進めています。

開発機の概要および性能

  • 市販の3輪タイプの乗用管理機の車体中央部に搭載する水田用除草装置で、4条用(図1・図2)と6条用があります。本装置は昇降可能であり、主要部は条間除草用の爪付きローターと株間除草用の揺動レーキで構成されています。爪付きローターは、管理機の進行方向と同じ方向に高速回転(ローター回転速度:330rpm)することで、揺動レーキは進行方向と直行する方向に往復運動(揺動速度:400rpmまたは750rpm)することで除草を行います。
  • 本装置を乗用管理機の車体中央部に搭載することにより、除草作業を確認しながら行うことが可能となり、また、除草装置が条間から大きく外れることが少なくなるため、除草作業による欠株が減少します。
  • 4条用および6条用水田用除草装置とも除草作業速度は、最速1.2m/sで行うことが可能で、歩行用除草機(約0.3m/s)の約4倍です。
  • 除草効果が高く、2回の除草で80%以上の除草率です(図3)。欠株率もおよそ3%以下と低くなっています(図4)。
  • チェーン除草、米ぬか除草と組み合せることで、雑草の防除効果がより高くなります。

今後の予定・期待

本装置は、来年度より4条用の水田用除草装置から市販予定としており、本装置の実演を通じて関係者の理解を深めるため、12月に現地検討会を開催する予定で す。今後も有機農業を推進する各県、生産組合などと連携を取りながら、本装置を利用した雑草防除技術の普及に努めます。

用語の解説

エコファーマー制度 : 持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律に基づき、都道府県知事が認定した農業者(認定農業者)制度。

有機JAS認定制度 : 有機食品のJAS規格に適合した生産が行われていることを登録認定機関が検査し、その結果、認定された事業者のみが有機JASマークを貼ることができる制度。「有機JASマーク」がない農産物と農産物加工食品に、「有機」、「オーガニック」などの名称の表示や、これと紛らわしい表示を付すことは法律で禁止。

図1-水田用除草装置(4条用) 図-2水田における除草作業(4条用)

図3 水田用除草装置の除草効果、図4 水田用除草装置の欠株率