プレスリリース
(研究成果)ニラ用の組合せ調量機構を開発

- 収穫後の作業(調製~結束)の機械化一貫体系構築に貢献 -

情報公開日:2016年5月17日 (火曜日)

ポイント

  • 2~3束の小束を組み合わせて、出荷規格の束に調量※1できる機構を開発
  • 秤上での載せ降ろし作業を省力し、高精度な調量が可能

概要

農研機構農業技術革新工学研究センターでは、ホウレンソウやニラなどの軟弱野菜を出荷規格質量に合わせる調量作業の省力化を目的として、任意の小束を自動的に組み合わせて調量するニラ用の組合せ調量※2機構を開発しました。

本機構では、作業者が供給した小束を順に計量・貯留し、「目標質量を満たし、最も小さな質量となる組合せ」を選ぶことで、目標質量の束を作ることができます。目標質量110gに対して、110~115gに調量された束は、全体の95%に達し、高精度な調量ができました。

今後、結束装置と連動する調量装置を開発することで、下葉除去等の調製作業、調量作業、その後の結束作業を含めた収穫後の作業全体の機械化一貫体系を構築し、能率向上、省力化を図ります。

関連情報

予算 : 運営費交付金

特許 : 特許出願済み

詳細情報

背景

ホウレンソウやコマツナ、ニラなどの軟弱葉菜類は、不要な葉や根、泥などを除去した後、出荷規格質量の束に結束、もしくは袋詰めをして出荷されています。一般的にこれらの作業は、各生産者により手作業で行われています。出荷規格質量を下回ると返品やクレームの対象となり、逆に大きく上回ると出荷数量が減り、減収を招くことになります。このように、調量作業は収益に関わる重要な作業であり、秤の上で野菜を載せたり降ろしたりする細かな作業を繰り返す煩労な作業でもあります。

そこで、調量作業の省力化、将来的には収穫後作業の機械化一貫体系の構築を目指し、軟弱野菜の調量機構の開発に取り組みました。

平成25年度には、小束の質量やばらつきを想定したシミュレーションを行い、装置のバケット数を決定しました。26~27年度には調量基礎試験装置を試作し、実際のニラによる調量作業を行い、バケット数と調量精度、作業能率の関係を把握しました。また、27年度より、生産者のコメントを参考に改良するとともに、結束機と連動する調量装置の開発を目指し、装置構成を検討しています。

内容

  • 試作した調量基礎試験装置は、組合せバケット部、計量部、取出し部、制御部で構成されます(図1)。組合せバケット部は、パイプ形状のバケットを8本有するターンテーブルからなり、バケットが計量部、もしくは取出し部の直上に位置するように回転します。
    計量部直上の空バケットに小束が供給されると、計量部が検知・質量測定を行います。これを順番に行い、全ての組合せバケットに小束が供給されると、「予め設定した目標質量を満たし、最小となる小束の組合せ」が選択されます。選択したバケットを取出し部にセットし、小束を取り出します(図2)。
    計量部が定まっているため、作業者は常に同じ位置に小束を供給することができます。また、ロードセル※3を1つにすることで、低コスト化を図っています。
  • 調量基礎試験装置は、目標質量の1/3、もしくは1/2程度の小束を組み合わせることで、目標質量の束に調量します。なお、供給する小束の量には、ある程度のばらつきが許容され、作業者の感覚に任せて供給することができます。
    目標質量を110gに設定し、35g程度の小束、および55g程度の小束を6~8束供給して作業を行った場合、110~115gに調量できた割合は8割以上と満足できる精度でした。特に、35g程度の小束を7、および8束、55g程度の小束を8束供給した場合には、約95%と高い調量精度を得ました(図3)。
  • 一束を調量するのに要した時間は、35g程度の小束を供給した場合は平均17秒(6~27秒)、55g程度の小束を供給した場合平均13秒(7~19秒)で、作業者の待ち時間の少ない作業が可能です。
  • 現在、既存の結束機と連動できる調量装置の開発を目指し、装置構成を検討しています(図4)。

今後の予定・期待

開発した調量機構では、下葉除去などを終えた小束を作業者の感覚に任せて供給するのみで、調量作業を効率的に、高精度に行えることがわかりました。

今後は、結束機と連動できる装置の開発に取り組みます。調量装置から結束機へ自動で供給、結束されることで、調製・調量・結束の機械化一貫体系が構築され、収穫後作業全体の能率が向上します。

用語の解説

※1 調量 : 本記事では、出荷規格などの目標とする質量を適正に満たす質量の束にすることを調量と呼んでいます。質量を計測する計量とは区別して使用しています。

※2 組合せ調量 : 目標の質量に対して、小分けされた状態の質量を複数個測定し、それらを組み合わせて目標の質量とする方法です。多くの食品の他、農産物ではピーマンの選果にも利用されている方法です。これに対して、秤の上で少量ずつ足したり引いたりする方法を加減方式と呼ぶこともあります。

※3 ロードセル : 質量やトルクなどの力を検出するセンサーです。ここでは、一般的な電子秤と同様に、荷重を測定するために使用しています。

図1 調量基礎試験装置

図2 調量基礎試験装置の動作工程

図3 目標質量110gにおける調量精度

図4 収穫後作業の機械化一貫体系の構想 (調量装置の構成は結束機に対応)