プレスリリース
(研究成果)自脱コンバインの省エネルギー性能評価試験方法を作成

- 省エネルギー性能の高い機械の普及を促進 -

情報公開日:2016年5月17日 (火曜日)

ポイント

  • 4条刈自脱コンバインの水稲収穫時の燃費を型式間で公平に比較可能な試験方法を作成
  • 収穫する稲の収量や籾水分、ほ場の硬さなどの試験条件に違いがあっても、本評価試験方法に従って試験データを補正することで、30a区画の水稲収穫時燃費を再現性高く算出可能

概要

農研機構農業技術革新工学研究センターでは、自脱コンバインの省エネルギー性能を評価する試験方法を作成しました。

本試験方法は、4条刈自脱コンバインで30a区画の水稲収穫を行った時の燃費を算出するものです。収穫時の燃費に大きな影響を及ぼす収量やもみ水分、ほ場の硬さなどの条件は、ほ場試験で揃えることが困難なため、試験で得られた燃費をそのまま型式間の比較データに用いることはできません。本試験方法では、基準となる作物条件やほ場条件を設定し、試験を実施した時の条件が異なる場合はその差に基づいて実測燃費を補正することにより、再現性の高い燃費を求めることができます。

型式間の比較が可能な燃費を算出することにより、ユーザーが購入する際の有益な情報となり、省エネルギー性能の高い自脱コンバインの普及に繋がります。

関連情報

予算 : 農業分野におけるCO2排出削減促進検討事業(農林水産省)

詳細情報

開発の背景と経緯

温室効果ガス削減に寄与する省エネルギー型農業機械へのニーズが高まるなか、各種機械の省エネ性能評価手法の確立が望まれています。自脱コンバインによる水稲収穫時の燃費は、一定面積を刈取った時の消費燃料を満タン法※1で計測する方法が一般的に用いられていましたが、この方法では、作物条件やほ場条件の違いによる影響が排除できないため、公平に比較可能な性能を評価・表示することはできませんでした。こうしたなか、平成26~27年度に農林水産省からの委託事業「農業分野におけるCO2排出削減促進検討事業」のなかで、機関出力35kW程度(約47PS※2)の4条刈自脱コンバインの省エネルギー性能評価試験方法の作成に取り組んできました。

内容

  • 本試験方法は、機関出力35kW程度(約47PS)の4条刈自脱コンバインで30aの収穫(対象水稲品種:コシヒカリ)を行った時の燃費を求める方法です。
  • 30a収穫作業は、四隅の手刈りや斜め刈りはせず、全て90度旋回の回り刈りを行うこととします(図1)。30a収穫時の燃費は、条方向及び枕地方向の直進刈取、旋回、移動、排出の4つの構成要素燃費(作業別の燃料消費量)を足し合わせたものとなり(図2)、このうち排出燃費を除く3要素は測定した燃費を補正することとします。
  • 走行・駆動燃費(直進刈取燃費のうち足回りに使われる燃費)、旋回燃費、移動燃費については、測定した燃費にほ場条件補正係数(ほ場の硬さに応じた係数)をかけ、さらに籾重補正係数(こく粒タンクに堆積したもみの重さに応じた係数)をかけて補正します。
  • 刈取燃費(直進刈取燃費のうち刈取・脱穀・選別に使われる燃費)については、同程度の出力の基準機を定め、この基準機の刈取燃費(直進刈取燃費のうち刈取・脱穀・選別に使われる燃費)を推定する重回帰式を作成しました。他の供試機に対しては、この重回帰式を適用して、以下の方法により推定します。
    1)供試機で刈取条数や作業速度を種々変えた刈取試験(7試験区×2反復)を行い、その時の刈取燃費を実測します。
    2)試験時の作物・作業条件を重回帰式の変数に代入することで、同じ条件で試験をした時の基準機の刈取燃費推定データが14個得られ、これと供試機の実測刈取燃費との間の回帰式を導くことができます(図3)。
    3)標準の試験条件で算出した基準機の推定刈取燃費と上記の回帰式から、標準の試験条件における供試機の刈取燃費を求めます(図3)。
  • 本試験方法では、最高作業速度の70~90%の範囲で任意の作業速度に設定し、30a収穫時の燃費と作業能率を求めることができます。機関出力35kW(47PS)程度の複数の自脱コンバインに対し良好な推定結果が得られ、作成した試験方法が妥当であると検討委員会により評価されました(表)。

今後の予定・期待

  • 一般社団法人日本農業機械化協会が実施している「農業機械の省エネルギー性能認証表示制度」において、平成28年度から追加される自脱コンバインの評価試験方法として採用が予定されています。
  • 型式間の比較が可能となることで、ユーザーが購入する際の有益な情報となり、省エネルギー性能の高い自脱コンバインの普及に繋がります。

用語の解説

※1 満タン法 : 試験の前後に燃料を満タンにして使用した燃料の量を計測する方法。
※2 PS : 馬力を表す単位で、1馬力は約0.735キロワット(1PS=0.735kW)。日本では内燃機関などに限り使用が認められ、記号PSを用いる。

図1 30a収穫シミュレーションの作業行程

図2 30a収穫時の構成要素燃費

図3 刈取燃費の算出例

表 30a収穫燃費シミュレーション結果の例