ポイント
農研機構では生産現場等からの要請対応やスマート農業の推進のため、農業機械技術クラスター事業の令和3年度の実施課題として、かんしょ茎葉処理機、タカナ収穫機、雑穀コンバイン及び果樹園自動スピードスプレーヤの開発を新たに開始します。引き続き地域農業の機械化ニーズへの対応やスマート農業の充実に向けて取り組んでまいります。
概要
農研機構(本部:茨城県つくば市)では、多様な現場ニーズに即応でき、かつ異分野の知見を取り込むことができるように、「農業機械技術クラスター事業」(以下、技術クラスター、https://www.naro.affrc.go.jp/org/brain/iam/cluster/index.html)を2018年4月から開始しています。スマート農業等の先端技術研究及び農業機械の安全性検査の実施とともに、関係機関との連携を従前以上に密にして業務を遂行する体制としています。
技術クラスターで扱う共同研究課題は、①地域農業機械化支援タイプ、②革新コア技術実用化タイプ、③次世代革新基盤技術タイプの3つに分類しています。
今回新たに開始する研究課題は以下の4件で、いずれも①と②のタイプに該当します。
今回新たに開始する研究課題は以下の4件で、いずれも①と②のタイプに該当します。
- (1) かんしょの作付け拡大を支援する高能率収穫体系の開発
(研究期間:2021~2023年度、地域農業機械化支援タイプ(園芸))
[目的] 国内の青果用かんしょ1)は需要が拡大しており、茨城県を中心とする青果向けの出荷割合が高い産地では、輸出量の拡大も視野に入れた増産のための作付け拡大が強く進められています。作付け拡大には収穫作業を効率化する機械化が必要となるため、高能率収穫体系を開発します。
なお、本課題は茨城県のかんしょ生産拡大のため施策である「茨城かんしょトップランナー産地拡大事業」を受け、茨城県と農研機構との連携協定により、茨城県農業総合センターと農研機構が現地の機械化体系を調査のうえ、高能率収穫作業に結びつく技術開発について検討し、課題化に至ったものです。 - (2) 漬物用タカナ収穫機の開発
(研究期間:2021~2023年度、地域農業機械化支援タイプ(園芸))
[目的] 九州地方の名産である漬物用タカナ2)を取り巻く状況として、労働力不足及び原料不足は、生産現場だけでなく、加工業者を含めた重要な課題となっています。特に収穫作業3)は、いまだに手作業が基本で、延べ40時間/10aを要しており、収穫作業の機械化が強く求められています。このため、現地の要請に応じた漬物用タカナ収穫機を開発します。
なお、本課題は鹿児島県漬物商工業協同組合から鹿児島県知事に対し強い開発要請があり、これを受け、鹿児島県農業開発総合センター大隅支場と農研機構が現地の作業体系に基づく機械化の方向性を調査・検討し、課題化に至ったものです。 - (3) 雑穀4)類対応コンバインの開発
(研究期間:2021~2023年度、地域農業機械化支援タイプ(土地利用型))
[目的] 消費者の健康志向により、国産の雑穀や油糧作物等に対する強い需要がある一方で、長稈で子実が微細な雑穀の収穫作業の効率化が図られていない等の要因から、栽培面積が拡大せず、供給の大部分を輸入に頼っている現状があります。
このため、稲・麦・大豆の収穫への対応に加え、長稈で子実が微細なために収穫ロスが大きくなる雑穀類の収穫にも対応できるコンバインを開発します。 - (4) 果樹園のスマート化に資する自動運転スピードスプレーヤ5)の開発 (研究期間:2021~2023年度、革新コア技術実用化タイプ(園芸)) [目的] 果樹園では薬液散布作業はスピードスプレーヤ(以下「SS」という。)が主に用いられていますが、近年、農業者の高齢化に伴うSSのオペレータ不足により、適期防除が困難になってきています。また、SSの転倒や樹枝への挟まれ等による死亡事故が毎年発生しており、至急の対策が必要です。さらに、果樹園において、作業履歴データを取得できる機械の活用を望む声もあります。 このため、平坦地のわい化リンゴ6)園をターゲットに、果樹園内を自動運転しながら農薬散布作業をすることができ、かつ作業履歴も取得できるSSを開発します。
問い合わせ先
研究推進責任者 :
農研機構農業機械研究部門 所長 大谷 隆二
研究担当者 :
同 機械化連携推進部 機械化連携推進室
室長 杉本 光穗
室長 杉本 光穗
広報担当者 :
同 研究推進部 研究推進室 広報チーム
チーム長 藤井 桃子
チーム長 藤井 桃子