プレスリリース
(お知らせ)安全性検査のロボット・自動化農機検査の対象機種に 「乾燥機(穀物用循環型)の遠隔監視装置」を新たに追加します

情報公開日:2023年8月31日 (木曜日)

ポイント

  • 農研機構は令和5年9月1日から「乾燥機(穀物用循環型)1)遠隔監視2)装置」のロボット・自動化農機検査を新たに開始します。
  • 安全性検査のロボット・自動化農機検査の対象機種は、農用トラクター(乗用型)、田植機に次いで3機種目になります。
 農研機構では、農業機械や農業施設を対象にして実機を確認しながら安全性が確保されているかどうかを検査する安全性検査(任意の制度)を行っています。
 この度、遠隔監視による運転を行う乾燥機について、施設内・施設外遠隔監視装置3)4)の機能、運転状態異常5)時や通信障害6)時の安全機能などの要件、試験方法を定めたロボット・自動化農機検査の主要な実施方法及び基準を策定し、令和5年9月1日から「乾燥機(穀物用循環型)の遠隔監視装置」のロボット・自動化農機検査を新たに開始します。
 引き続き、安全性検査のロボット・自動化農機検査を通じて、直進や旋回の自動操舵運転やロボットトラクターなどの無人運転ができる先進的な機械が現場で安心して導入・活用していただけるように努めてまいります。
問い合わせ先
研究推進責任者 :
農研機構農業機械研究部門 所長 安原 学
研究担当者 :
同 安全検査部 部長 志藤 博克
同 安全検査部 安全評価グループ グループ長補佐 紺屋 秀之
広報担当者 :
同 研究推進部 研究推進室 広報チーム チーム長 藤岡 修

概要

 安全性検査は、①各種農業機械における安全装備について安全装備の確認項目及び安全性検査基準に基づいて検査する安全装備検査、②農用トラクター(乗用型)、農用運搬機(乗用型)及び座席を有するほ場内運搬機にそれぞれ装備される運転者を防護する装置を対象に、強度や安全空間が確保できるか等について検査する安全キャブ・フレーム検査、③ロボット農機や自動化農機の先進的な機械・装置の安全性について検査するロボット・自動化農機検査から構成されます。
 今回、ロボット・自動化農機検査の対象機種に「乾燥機(穀物用循環型)の遠隔監視装置」を追加し新たに検査を開始します。策定したロボット・自動化農機検査の主要な実施方法及び基準の概要は、以下のとおりです。
1. 遠隔監視装置による遠隔操作7)確認試験
内容 遠隔監視装置により使用者が操作可能な機能を確認することを目的とする。
試験
方法
・乾燥機及び全ての遠隔監視装置における非常停止操作の方法及び機能を確認する。
・乾燥機及び全ての遠隔監視装置における停止状態から稼働状態への操作の方法及び機能を確認する。
・乾燥機周辺に人を存在させた際の施設内遠隔監視装置における操作の可否を確認する。
基準
  
・乾燥機及び、全ての遠隔監視装置からは常時、非常停止操作が可能であること。
・停止状態から稼働状態への操作は、乾燥機又は施設内遠隔監視装置からのみ可能とすること。
・乾燥機周辺に補助作業者等が存在し、危険を及ぼす可能性がある場合は、施設内遠隔監視装置からの停止以外の操作はできないこと。
2. 遠隔監視装置による運転状態表示確認試験
内容 遠隔監視装置により使用者が乾燥機の運転状態を認識できるかどうかを確認することを目的とする。
試験
方法
・遠隔監視装置における表示器の表示状態及び内容を確認する。
・その他安全上必要と考えられる機能について確認する。
基準 ・遠隔監視装置により、適切に状態表示がなされ、使用者が乾燥機の状況を容易に認識できること。
・遠隔監視装置から操作が行われた場合は、その操作内容と操作を行った遠隔監視装置が認識できること。
・遠隔監視装置により、本機の水分、温度、風量、設定など各種データ及び故障履歴等の運転履歴情報が確認できること。
3. 運転状態異常時の安全機能確認試験
内容 乾燥機に異常が発生した場合の安全機能等を確認することを目的とする。
試験
方法
・乾燥機に異常を発生させた際の遠隔監視装置における警告及び表示の状態並びに乾燥機の稼働状態を確認する。
・異常の原因を除去した後に、乾燥機及び遠隔監視装置から再起動操作を行い、乾燥機周辺に人を存在させない場合と存在させた場合のそれぞれについて稼働状態を確認する。
基準 ・乾燥機に異常が発生した際は、遠隔監視装置から視覚的かつ聴覚的な警告が発せられ、使用者が容易に認識できること。
・乾燥機に異常が発生した際は、乾燥機は安全に自動停止すること。
・乾燥機に異常が発生した際は、遠隔監視装置に異常内容及び点検箇所が表示されること。
・自動停止後の乾燥機の再起動は、乾燥機又は施設内遠隔監視装置からのみ可能とする。 なお、乾燥機周辺に補助作業者等が存在し、危険を及ぼす可能性がある場合は、施設内遠隔監視装置からの再起動はできないこと。
4.通信障害時の安全機能確認試験
内容 遠隔監視装置の通信に障害が発生した場合の安全機能等を確認することを目的とする。
試験
方法
・遠隔操作装置の通信に異常を発生させた際の遠隔監視装置における警告及び表示の状態並びに乾燥機の稼働状態を確認する。
・異常の原因を除去した後に、乾燥機及び遠隔監視装置から再起動操作を行い、乾燥機周辺に人を存在させない場合と存在させた場合のそれぞれについて稼働状態を確認する。
基準 ・遠隔監視装置の通信に障害が発生した場合、遠隔監視装置から視覚的かつ聴覚的な警告が発せられ、使用者が容易に認識できること。
・遠隔監視装置の通信に障害が発生した場合、乾燥機は安全に自動停止すること。
・自動停止後の乾燥機の再起動は、乾燥機又は施設内遠隔監視装置からのみ可能とする。
なお、乾燥機周辺に補助作業者等が存在し、危険を及ぼす可能性がある場合は、施設内遠隔監視装置からの再起動はできないこと。
集中遠隔監視装置8)に関する試験(選択試験)
内容 集中遠隔監視装置について、上述した1.~4.の内容を確認することを目的とする。
試験
方法
・集中遠隔監視装置の機能、配置及び操作方法を確認する。
・集中遠隔監視装置の表示器の表示状態及び内容を確認する。
・乾燥機に異常を発生させた際の集中遠隔監視装置における警告及び表示の状態並びに乾燥機の稼働状態を確認する。
・集中遠隔監視装置の通信に異常を発生させた際の警告及び表示の状態並びに乾燥機の稼働状態を確認する。
・その他安全上必要と考えられる機能について確認する。
基準 ・遠隔監視及び遠隔操作に必要な装置が装備されており、操作を要する装置にあっては、安全、かつ容易に操作できるよう配置されていること。また、その装置の有する機能、操作方法等が明確に表示されていること。
・集中遠隔監視装置からは常時、非常停止操作が可能であること。
・集中遠隔監視装置より、適切に状態表示がなされ、使用者が乾燥機の状況を容易に認識できること。
・遠隔監視装置から操作が行われた場合は、その操作内容と操作を行った遠隔監視装置が認識できること。
・集中遠隔監視装置により本機の水分、温度、風量、設定など各種データ及び故障履歴等の運転履歴情報が確認できること。
・乾燥機に異常が発生した際は、集中遠隔監視装置から視覚的かつ聴覚的な警告が発せられ、使用者が容易に認識できること。
・乾燥機に異常が発生した際は、集中遠隔監視装置に異常内容及び点検箇所が表示されること。
・集中遠隔監視装置の通信に障害が発生した場合、集中遠隔監視装置から視覚的、聴覚的な警告が発せられ、使用者が容易に認識できること。
・集中監視装置が天災や停電、通信障害などで正常に機能しない場合に備え、速やかに同等の遠隔監視を開始できるバックアップ機能を有すること。

用語の解説

  1. 乾燥機(穀物用循環型)

    収穫直後の穀物は水分が高いため、加熱した空気を当てるなどして乾燥させて貯蔵性を高めています。乾燥機は、穀物をタンクに一定量投入して、庫内に加熱した空気を流すことで穀物を乾燥させる機械です。さらに、乾燥ムラが生じないように庫内の穀物を循環させながら乾燥させるものを循環型乾燥機といいます。

  2. 遠隔監視

    遠隔監視とは、使用者が間接的に乾燥機の運転状態や異常の有無等の情報を把握し、異常が生じた際は直ちに装置を停止させ、速やかに状況を確認できる状態で監視することをいいます。

  3. 施設内遠隔監視装置

    施設内遠隔監視装置とは、乾燥機と有線で接続されている同じ施設内に設置されている遠隔監視装置をいいます。

  4. 施設外遠隔監視装置

    施設外遠隔監視装置とは、乾燥機が設置されている施設外において、使用者が利用する遠隔監視装置をいいます。

  5. 運転状態異常

    異常とは、風量の低下、過度な送風温度上昇、バーナーの失火・異常燃焼、穀物温度の過度な上昇、穀物水分が急激に低下したり、逆に何時間経っても水分が下がらなかったりするような異常な水分変化、灯油漏れ、モータ過負荷、駆動部の空回り等、そのまま乾燥機が運転を継続すると火災や品質事故などの重大な事故につながる可能性がある状態をいいます。

  6. 通信障害

    通信障害とは、乾燥機の遠隔監視又は遠隔操作ができない状態をいいます。

  7. 遠隔操作

    遠隔操作とは、使用者が通信技術を使って現場の機械に直接触れることなく、間接的に乾燥機の持つ機能について操作することをいいます。

  8. 集中遠隔監視装置

    集中遠隔監視装置とは、施設内監視装置及び施設外遠隔監視装置以外に設置された装置であって、施設外遠隔監視装置と同等の機能を有するものをいいます。例えば、メーカー等がお客様に販売した機械や施設を一括でメーカー側が遠隔監視している装置を指します。