プレスリリース
焼酎用カンショ新品種「サツママサリ」を育成

- いもの形状や貯蔵性が優れ、甘くフルーティな焼酎に! -

情報公開日:2011年6月30日 (木曜日)

ポイント

  • 「コガネセンガン」の欠点であるいもの形状、貯蔵性や線虫抵抗性などを改良した焼酎用の新品種です。
  • 「サツママサリ」を原料とした焼酎は甘くフルーティな香りとすっきりした味が特徴です。

概要

  • 農研機構 九州沖縄農業研究センターは、「コガネセンガン」よりも、いもの形 状や貯蔵性などが優れる新品種「サツママサリ」を育成しました。
  • 「サツママサリ」はでん粉歩留が高いため、原料当たりの純アルコール収得量が 多く、焼酎は甘くフルーティな香りとすっきりした味が特徴です。
  • 鹿児島県において「コガネセンガン」と並ぶもう一つの焼酎用品種として普及することが期待されています。

関連情報

  • 予算:運営交付金、農林水産省委託プロジェクト「低コストで質の良い加工・業務用農産物の安定供給技術の開発」(加工プロ)(2006~2010年度)」
  • 品種登録出願番号:「第24812号」

詳細情報

開発の社会的背景と研究の経緯

「コガネセンガン」を原料とした焼酎は、独特の風味が実需者から高く評価されており、焼酎用の最適品種として位置づけられています。しかし、いもの表面に条溝(縦溝)が生じて外観が劣り、貯蔵性も悪いため、作業時の労力や歩留の低下が課題で、線虫にも弱いという欠点を持っています。実需者からは「コガネセンガン」より栽培特性が優れた醸造適性の高い品種に対する要望が高まっていることから、いもの形状、貯蔵性や線虫抵抗性に優れた醸造適性の高い品種の開発に取り組んできました。

研究の内容・意義

  • 「サツママサリ」は2000年に焼酎醸造適性が高い「ときまさり」を母親に、高でん粉で収量性の高い「九州102号」を父親として交配し、選抜した系統です。。
  • いもの貯蔵性は「コガネセンガン」より優れており、貯蔵中の腐敗はほとんど見られません。いもの形状は良好で、「コガネセンガン」より条溝が少なく、取り扱いが容易です(表1図1)。
  • でん粉歩留が「コガネセンガン」より1~2ポイント高いため(表2)、醸造時の原料当たり純アルコール収得量が多い品種です。焼酎の風味は甘くフルーティな香りとすっきりした味が特徴です(表3)。
  • サツマイモネコブセンチュウ抵抗性は“強”、ミナミネグサレセンチュウ抵抗性は“中”で、いずれも「コガネセンガン」より優れています(表1)。
  • 収量は、標準無マルチ栽培で「コガネセンガン」より多くなりますが、長期透明マルチ栽培では「コガネセンガン」より劣ります(表2)。
  • 命名の由来は、「いもの形状、貯蔵性や焼酎の香味など多くの点で優れているサツマイモ」の意味です。

今後の予定・期待

鹿児島県内の主要な酒造会社が参画している「本格焼酎原料研究会」を通じて、「サツママサリ」の県内への普及が始まっています。2010年秋には、焼酎として初の商品化も行われました。「サツママサリ」は、「コガネセンガン」の欠点を改良し、その焼酎は「コガネセンガン」に似た酒質であることから、「コガネセンガン」に並ぶもう一つの焼酎用品種の柱としての普及が期待されます。

用語解説

条溝
いもの肥大が均一に進まず、縦方向に入る溝のような部分を条溝といいます。条溝のできやすさには品種間差があり、「コガネセンガン」は多い品種です。条溝が深いと原料の洗浄時に土が取れにくく、その部分に病虫害の被害があると貯蔵中の腐敗にもつながります。通常、原料の洗浄後に手作業でいもの腐敗や病虫害の被害部分を取り除く作業を行いますが、条溝が深い品種では作業がしにくく、手間もかかります。

貯蔵性
熱帯原産のカンショは低温に弱く、大体10°C以下の低温で貯蔵するといもの表面に黒変や腐敗が生じます。品種によって貯蔵のしやすさには差があり、これを貯蔵性といいます。「コガネセンガン」は腐りやすい品種です。

焼酎の風味(香味)
いも焼酎には米、麦、蕎麦などの焼酎にはない独特の風味や甘味があります。その代表的な香りは柑橘系の香りとされ、モノテルペンアルコール類と呼ばれる微量香気成分が関係することが明らかにされています。これらの香気成分の量や比率が品種によって異なるため、いも焼酎の香味は品種により変わります。

醸造適性
品種になる前の系統の段階から、実需者と連携して、試験的に焼酎を醸造し、その焼酎の官能評価を行うことにより、その系統の焼酎への適性を判定しており、それを醸造適性といいます。通常は「コガネセンガン」の焼酎を標準として、焼酎の味や香りを相対評価します。