プレスリリース
九州地域向けの中生の そば新品種「さちいずみ」を育成

情報公開日:2008年12月25日 (木曜日)

農研機構 九州沖縄農業研究センターでは、九州地域での秋まきそば生産の拡大に向けて、中生のそば品種「さちいずみ」を育成しました。本品種は、関東地域以西での秋まき栽培が可能で、九州地域では晩播にも適しており、既存の在来品種より栽培期間が短くて多収です。このため、秋に九州に襲来する台風を避けて晩播することにより、さらに既存の在来品種と組み合わせて栽培することで、そばの安定生産と収穫管理機械の合理的利用を図ることができます。


詳細情報

《背景とねらい》

そばは九州地域で広く栽培されています。北部九州では8月中下旬、南九州では9月上中旬に播種し、11月上旬から12月上旬に収穫します。九州地域の収量性は高いのですが、栽培期間が長いので栽培期間中に台風の被害に遭ったり、刈り取り前に早霜で枯死して収穫ができなくなったりして、作柄が安定しません。

そこで、栽培期間が短くて多収な九州地域に適するそば品種が求められていました。

《成果の内容・特徴》

  • 「さちいずみ」(図1、図2)は、耐倒伏性が強い新潟県在来種と良質で早生の長崎県対馬産在来種を交配し、選抜して育成したそば品種です。鹿児島県で栽培されている「鹿屋在来」よりも栽培期間が短いのが特徴です。
  • 開花期は「常陸秋そば」と同じで、「鹿屋在来」よりやや早く、成熟期は「常陸秋そば」と同じで、「鹿屋在来」より10日以上早い中生種です。(表1)
  • 丈は短く、耐倒伏性は「鹿屋在来」と同じくらい強いです(図1、表2)。
  • 収量性は「常陸秋そば」より多収で、鹿児島県では「鹿屋在来」と同じくらい多収です(表1、表2)。
  • 麺の食味は「常陸秋そば」「鹿屋在来」と同じで、良食味です(表1)。
  • 栽培は、関東以西の地域に適し、秋まきそばとして栽培できます。

《品種の名前の由来》

当該品種が泉のわき出るごとくに広く普及し、栽培地域に幸がもたらされることを願って命名しました。

【参考データ】

表1.さちいずみの生育特性(3年間の平均値)

表2.さちいずみの鹿児島県における栽培の特徴(遅まき)

図1.完熟期の草姿(左からさちいずみ、常陸秋そば、鹿屋従来) 図2.種子(上:「さちいずみ」、下左:「常陸秋そば」、下右:「鹿屋従来」

用語解説

秋まき栽培
8月下旬から9月中旬に播種して10月下旬から12月上旬に収穫するそば作期栽培。主に九州や四国南部で行われている栽培型