プレスリリース
輸送中の果実の傷みを大幅に軽減できるイチゴ包装容器を開発

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情報公開日:2011年9月 2日 (金曜日)

ポイント

  • 長距離輸送が難しかったイチゴ等の軟弱果実の輸送中の傷みを大幅に軽減できる包装容器を開発しました。
  • これまでよりも簡易なダンボール包装、レターパック、手土産用パック等、様々な販売形態が可能になります。

概要

農研機構 九州沖縄農業研究センター【所長 井邊時雄】と日本トーカンパッケージ株式会社【代表取締役 内藤博行】は、イチゴ等の軟弱果実の輸送中の傷みを大幅に軽減できる包装容器を開発しました。

合成樹脂製の容器の内側に伸縮性フィルムを接着し、伸縮性フィルムにより果実とホールトレーを挟み込むように固定し果実の動きを抑制することで、輸送中の果実の傷みを軽減します。

宅配便を用いた長距離輸送試験において、従来の平詰め包装と比較して、イチゴの輸送時の傷みを大幅に軽減できることを確認しました。

包装容器は、市販の各種ホールトレーをそのまま用いることができ、これまでよりも簡易な段ボール包装、レターパック、手土産用パック等、様々な販売形態が可能になります。

今後、イチゴやオウトウ等の軟弱果実の新しい輸送手段として、利用拡大が期待されます。

関連情報

  • 予算: 農林水産省「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」
  • 特許: 特開2010-168083、特開2011-143929

詳細情報

開発の背景・経緯

現在、日本産のイチゴは、その品質の高さから東南アジアの富裕層を中心として人気があります。

これらの国々への輸出量は、本格的な輸出が始まった2004年からの4年間で約11倍に急増し、2010年度実績で数量は101t、金額では1.85億円に達しました。

しかしながら、輸出用イチゴの主要な輸送形態は、その多くが国内と同様のプラスチックトレーを用いた平詰め等(図1)により行われるため、輸送中の振動や果実どうしの接触などで生じる傷みによる品質の低下が問題となっており、輸送過程での果実の傷み、鮮度低下を防ぐことのできる新たな包装形態の開発が課題となっていました。

そこで、農研機構 九州沖縄農業研究センターと日本トーカンパッケージ株式会社は共同で、輸送過程での果実の傷み、鮮度低下を防ぐことのできる包装容器の開発を進めました。

開発した包装容器の特徴・意義

  • 本包装容器の開発コンセプトは、果実の動きを抑制することで、輸送中の果実の傷みを軽減しようとするものです。
    その手段として、合成樹脂製の容器の内側に伸縮性フィルムを接着し、伸縮性フィルムにより果実とホールトレーを挟み込むように固定することを考案しました(図2)。
  • 宅配便を用いた長距離輸送試験において、新包装容器は従来の平詰め包装と比較して、イチゴの輸送時の傷みを大幅に軽減できることを確認しました(表1)。
  • 専用のトレーがいらず、市販のホールトレー(23.5×16.5cm程度)がそのまま利用できます(図2)。
  • 容器自体が外装を兼ねていますので、従来のような二重折りにした丈夫な段ボールを外箱に用いる必要がなく、より簡素な輸送形態が可能です(図3左)。
  • レターパック、手土産用パック等、アイディアを生かした様々な販売形態が可能です(図3)。
  • 本容器は「フルテクター」という商品名で、日本トーカンパッケージ株式会社から市販されています。

今後の期待

  • イチゴやオウトウ等の軟弱果実について、輸出を含めた長距離輸送の新しい手段として、利用拡大が期待されます。
  • これまで繊細な取り扱いが必要で対応が難しかったお土産や観光農園等での持ち帰り、インターネット等を用いた直販等に対応可能であるため、販路拡大が期待されます。

用語解説

ホールトレー
一つ一つのくぼみ(ホール)に果実を収められるようになっているトレーをホールトレー(またはソフトパック)と呼びます(図1右)。
ホールトレーは、ポリスチレンや不織布等でできた緩衝材で、イチゴでは主として贈答用に用いられています。
イチゴの品種により、ホールの形状が異なるトレーが利用されます。

イチゴの傷み程度

  • カビ発生
    輸送時の振動、荷物の取り扱いの乱雑さ等から、果実どうしあるいは果実とトレーとの接触面に過度の傷みが生じ、カビや腐敗の原因となる場合があります(写真1)。
  • 押し傷
    果実どうしあるいは果実とトレーとの接触により果実が押しつぶされ、過度の傷みが生じている状況で、著しく商品性が劣ります。
    300g2段詰め仕様の下段において、多く発生が認められます(写真2)。
  • 擦れ
    果実どうしあるいは果実とトレーが擦れ合うことにより、果皮が剥離し、果汁のにじみ等が生じる状況で、カビ等の発生要因となります(写真3)。
  • 痕跡
    果実とフィルム、ホールトレー、ウレタン製マット等との接触により、果実表面に光沢の変化やマットの痕跡(あと)が生じた状況で、果汁のにじみ等は生じず、傷み程度としては極軽微です(写真4)。