プレスリリース
糖度が高くておいしい食用サツマイモ新品種「べにはるか」を育成

- 九州沖縄農業研究センター開発品種の紹介 -

情報公開日:2007年10月 3日 (水曜日)

サツマイモ「べにはるか」は、蒸しいもの糖度が高く、食味が優れた食用品種です。全国的に栽培されている食用の主力品種「高系14号」より、いもの皮色、形状や大きさのそろいが優れ、センチュウや立枯病にも強いという特性を持っています。
収量性は「高系14号」並ですが、いもの外観が良好なため、A品収量が多い品種です。
鹿児島県において食用の奨励品種として普及に移される予定で、大分や千葉県でも普及が見込まれています。


詳細情報

1.育成のねらい

食用サツマイモの主力品種「高系14号」およびその派生系統(「なると金時」「土佐紅」「ベニサツマ」「ことぶき」など)は早期肥大性に優れ、安定した収量性を示しますが、サツマイモネコブセンチュウや立枯病に弱く、栽培条件によってはいもの形状の乱れや丸いもの発生などが見られます。
また、特に早掘から普通掘にかけて蒸しいもなどの甘味が少ないため、糖度が高くておいしい品種を望む声が市場や生産者等から寄せられています。
こうした要望に応え、消費者においしいサツマイモを提供するため、本品種を育成しました。

 

2.来歴の概要

「べにはるか」は、いもの外観が優れる「九州121号」を母、いもの皮色や食味が優れる「春こがね」を父として交配し、選抜した品種です(交配採種は平成8年に実施)。
食味やいもの外観などの特性が既存品種より「はるか」に優れることから、品種名を「べにはるか」と命名し、種苗法に基づく品種登録申請をしました。

 

3.新品種の特徴

サツマイモ新品種「べにはるか」は、蒸しいもの糖度が高く、甘味が強くておいしい品種です。
いもの皮色や外観も優れ、サツマイモネコブセンチュウに抵抗性を示します。

  • 蒸しいもの肉色は黄白で、「高系14号」より糖度が高く食味が優れています(表1)。
  • いもの形状は紡錘形、皮色は赤紫で外観は「高系14号」より優れています(写真2、 表2)。
  • サツマイモネコブセンチュウ抵抗性は「強」で、「高系14号」より優れています(表2)。
  • 育成地での上いも重は、標準栽培、早掘栽培ともに「高系14号」を上回っています (表2)。

4.今後の展開(普及の見通し)

鹿児島県で平成20年から奨励品種に採用される予定であり、県内の食用サツマイモ産地で普及に移されます。
また、大分県や千葉県でも普及が見込まれています(普及予定面積は200ha)。

 

参考データ

べにはるか系譜

 

べにはるかの特性

 

表2栽培特性

 

べにはるかの茎葉
写真1 「べにはるか」の茎葉

 

べにはるかの塊根
写真2 「べにはるか」の塊根

 

用語解説

黒変の程度:
蒸しいもなどの調理後に肉色が黒変する程度を無から多までの5段階で評価したもので黒変が少ないものが望ましい。
食用のほか、ペーストなどの加工用にとって重要な品質関連特性。
いもに含まれるポリフェノールと鉄イオンとの結合により黒色物質が生成するためとされている。

切干歩合:
薄く切った一定量の生いもを乾燥させ、乾燥後の重量から算出した乾物率(%)のこと。

サツマイモネコブセンチュウ:
サツマイモを加害する代表的なセンチュウで、他にもキュウリ、トマト、ニンジンなどの多くの作物に被害を与えます。
感染すると根に瘤をつくるのが特徴で、いもの外観品質や収量の低下を引き起こします。

貯蔵性:
10月に収穫したいもを翌年の2月までサツマイモ用貯蔵庫内や無暖房の室内に放置した後、腐敗の程度を調査し、貯蔵しやすさの程度を易~難で表しています。