大豆収穫において、コンバインによる収穫が大豆生産の効率化に大きく貢献しています。
一方で、コンバインを利用して収穫する場合、土のかみ込みや雑草などの混入が問題となります。
特に、軸流コンバインによる大豆収穫作業では、青立ち株や雑草等の混入による汚粒が問題となっており、青立ち株の抜き取りなどが作業者の負担となっています。
そこで、受け網をロール式(回転できるもの)に改良することにより脱穀部での茎莢の通過性を向上させ、脱穀選別損失を増加させないで汚粒を低減する技術を開発しました。
プレスリリース
大豆の汚粒を低減させるコンバイン用の受け網(ロール式)を開発
情報公開日:2007年8月 8日 (水曜日)
詳細情報
背景とねらい
軸流コンバインによる大豆収穫作業では、青立ち株や雑草等の混入による汚粒が問題となっており、青立ち株の抜き取りなどが作業者の負担となっています。
軸流コンバインでは排塵弁角度を大きくすることによって茎莢の通過性が向上し汚粒は低減しますが、脱穀選別損失が増加する等の問題があります。
そこで、受け網を改良することにより脱穀部での茎莢の通過性を向上させ、脱穀選別損失を増加させないで汚粒を低減する技術を開発しました。
成果の内容・特徴
- 軸流コンバインの大豆用受け網は標準では蜂の巣状に円形の穴があいた網です。
脱穀する際に、子実が速やかに受け網を通過して、選別部に落下しないと、青立ち株などの汁で汚れたりします。
そこで、この受け網をロール式(回転できるもの)に改良することにより、選別損失を増加させることなく、汚粒を低減させました。
さらに、脱穀部の駆動トルクを標準より低減させ、より小さな動力で脱穀できるようにしました。 - ロール式受け網はφ21mmのパイプ(鉄製)をこぎ胴と平行に配置した形状で、パイプは自由に回転できる構造です(図1)。
- 脱穀部での茎残留とくに受け網への引っ掛かりが「ロール式・18(パイプの隙間18mm)」では低減されます(図1)。
パイプの隙間12mmでは狭すぎて茎残留が多く残り効率よく脱穀できません。
パイプの隙間24mmでは幅が広すぎて、スムーズに排出されるべき茎が隙間に刺さり、汚粒の原因になります。
試験結果18mmが最適でした。 - 汚れについては、青立ち株のある圃場での収穫試験の結果、「ロール式・18」では標準の大豆用受け網に比較し汚れ指数が半分以下に減少します(図2)。
- 「ロール式・18」では受け網での子実の漏下性(脱穀部から選別部への通過性)については標準と特段差はなく、脱穀選別損失も1%以下でした(表1、図3)。
- 「ロール式・18」では脱穀部駆動トルクについては標準と比較し軽減します(表1)。
標準より小さい動力でも動かすことができます。
成果の活用面・留意点
- 大豆に対応した軸流コンバインに適用でき、実用化する予定です。
- 試験はフクユタカを用い摘莢によって作出した青立ち株による汚粒についてのみで、雑草による汚粒への効果は今後試験する必要があります。
具体的データ
用語解説
軸流コンバイン:
コンバインは脱穀機構の違いにより直流コンバインと軸流コンバインがあります。
国内では軸流コンバインが大部分です。
軸流コンバインは、大豆をこぎ室内でこぎ胴軸方向に送りながら、脱穀する方式です。
軸流の構造例:「生物生産機械ハンドブック(農業機械学会編)」より引用
こぎ胴:
円筒状のものにこぎ歯が付いており、これを回転させることにより、大豆を脱穀します。
脱穀部駆動トルク:
コンバインの脱穀部の駆動(主にこぎ胴の回転)に使われている動力からの駆動トルク(回転させる力)。
今回はこぎ胴の後部にあるプーリーにセンサ(歪ゲージ)を貼り付けて計測しました。
脱穀選別損:
脱穀選別する際に脱穀部で生じる損失する割合で、低いほど損失が少ないことを示す。
汚れ指数:
脱穀選別する際に紛れ込んだ土や雑草などで大豆が汚れます。
その汚れの程度を示す指標で0~4の5段階で示します。
値が小さいほど汚れが少ないこと。
すなわちきれいな大豆ということになります。
子実漏下率:
コンバインが取り込んだ大豆子実が受け網のどこで漏下し選別部に行っているかを調べた値です。
今回は受け網を5等分しそれぞれで漏下する子実と脱穀選別損失を合わせて100%となります。
この分布は受け網の性能・特性を示していると考えられます。
軸流コンバインの構造例:
「生物生産機械ハンドブック(農業機械学会編)」より引用