プレスリリース
ホールクロップサイレージ用の暖地向き極多収・極強水稲新品種「タチアオバ」を育成

- 平成18年度農林水産省農作物新品種 -

情報公開日:2006年10月19日 (木曜日)

育成のねらい

飼料イネは、水田を有効利用した飼料自給と、耕畜連携による資源循環型畜産の実現のための水田飼料作物として期待されています。
畜産業が盛んな九州では飼料イネの栽培が早くから普及し、全国の作付けのうち約半分が集中しています。しかし、九州で作付けの多い「モーれつ」は脱粒しやすく、また大分県で普及している「ニシアオバ」は、耐倒伏性に難点があり平坦肥沃地での普及に問題がある等、現行の専用品種には欠点もあります。
そこで耐倒伏性に優れ直播栽培が可能で、かつ地上部全重が重く、サイレージ品質が良好な九州地域向けの飼料イネ専用品種を育成しました。

来歴の概要

平成8年に直播適性を有する飼料イネ品種を目標に、晩生で生育量の多い「は系906」を母とし、LEMONT(アメリカの直播用品種)の太根性を導入した「(47-1-1(F2)/95SH50)F1」を父として交配を行い、選抜・育成しました。「ミナミヒカリ」に比べ、稈長は20cm程度長い。

新品種の特徴

  • 出穂期、成熟期は晩生・多収の主食用品種「ミナミヒカリ」よりそれぞれ5日、10日程度遅く、九州地域では"極晩生"。稈長は「ミナミヒカリ」に比べ20cm程度長い。脱粒性は難。
  • 全重は、「ミナミヒカリ」に比べ、早植えで約25%、普通期栽培で約15%重い。早植えでは乾物収量2t/10aを超す多収が得られる。
  • 推定TDN(可消化養分総量)含量は主食用品種と同程度。全重が重いので、早植えでの推定TDN収量は「ミナミヒカリ」より20%以上高い。サイレージ発酵品質も良好です。
  • 通常の主食用品種に比べ茎、根が非常に太い。耐倒伏性は"極強"で、直播栽培における転び型倒伏にも強い。

今後の展開(普及の見通し)

九州地域などで利用でき、特に平坦肥沃地での早植(イタリアンライグラス等の後作)で多収が得られる。普通期(麦後作)植えや直播にも適する。福岡県で普及予定。現在、品種登録に出願中です。

※ 「タチアオバ」は、農林水産省委託プロジェクト「新鮮でおいしい「ブランドニッポン」農産物提供のための総合研究」の成果です。

問い合わせ先(育成機関)

筑後水田作研究拠点 稲育種ユニット 担当者:坂井 真(ユニット長)
Tel:0942-52-0647(直通)

参考データ

タチアオバの系譜図

タチアオバの特性表

飼料イネ専用品種との比較

タチアオバの写真