遺伝子組換えワタの隔離ほ場における栽培試験について
九州沖縄農業研究センター
1.はじめに
九州沖縄農業研究センターでは、害虫抵抗性と除草剤抵抗性遺伝子を組み込んだ遺伝子組換えワタ(「組換えワタ」と呼称)の隔離ほ場における栽培試験を実施する予定です。組換えワタはアメリカで作出され、アメリカではすでに環境安全性の評価が終わり、普通畑での栽培に移行しているものです。わが国では搾油用や飼料用としてワタ子実が輸入されており、今後これらの組換えワタの子実も輸入されることが予想されます。しかし、わが国ではこれら組換えワタの環境安全性評価はこれまで行われていません。このため、当所では、場内に設置されている隔離ほ場を利用して、これら組換えワタの生態系への影響を評価する栽培試験を実施することとしました。
2.どんな目的で栽培試験をするのか?
通常のワタと組換えワタを他の作物から隔離されたほ場で栽培し、生育特性、繁殖特性などを調査し、組換えた目的の特性以外に変異があるかどうか、組換えワタの生態系への影響があるかどうかを評価します。
3.試験に用いる「組換え体ワタ」はどんなものか?
今回は、二つの栽培試験を行います。その一つは通常のワタ「PSC355」と除草剤耐性、害虫抵抗性組換えワタ「281/3006」を使います。もう一つは通常のワタ「Coker312」と除草剤耐性の組換えワタ 「LLCotton25」を使います。組換えワタは二つとも除草剤グルホシネート(商品名バスタ等)を散布しても枯れません。また、害虫抵抗性の組換えワタは鱗翅目昆虫(蛾の幼虫など)の食害を受けません。組換えワタの安全性評価はアメリカで完了しています。なお、組換えワタは日本で栽培される予定がありません。
4.どこで試験を行うか?
周囲を高いフェンスで囲まれた場内の「隔離ほ場」で実施します。隔離ほ場にはハウスを設けてその中で栽培試験を行います。隔離ほ場で生産された植物体などの全ては最終的にビニール袋に密封して焼却炉に運び焼却します。隔離ほ場には調査をするための「調査室」及び隔離ほ場内で使用した機械や農具、靴などを洗浄する「洗い場」と農具などを保管する倉庫が設置されています。
5.どんな試験を実施するのか?
- 通常ワタと組換えワタの種をまき、発芽から開花を経て実(綿花)が熟すまで、生育や形態の違いを調査します。また、害虫に犯されるか、除草剤で枯れるか等の調査をします。
- 組換えワタと普通ワタが自然に交配して種子ができるか、組換えワタが生き残り雑草にならないか、予想されない病気や害虫の発生源にならないか、等について日常的に調査を行います。
- 栽培した跡地に特別の微生物が増えていないか、他の作物に影響する物質が残されないか、等も調査します。
- 調査は隔離ほ場内で行い、植物体などは焼却する場合を除き他の場所に持ち出しません。
- 試験は、5月初旬のは種に始まり、10月末までに全ての調査を終了する予定です。
6.試験の結果をどうするか?
試験結果は、学識経験者からなる専門委員会において安全性評価を受けることになっています。