アサヒビール株式会社
九州沖縄農業研究センター
アサヒビール株式会社と、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 九州沖縄農業研究センター(以下「九州沖縄農業研究センター」という)は、サトウキビを原料としたバイオマスエタノール普及に向けた共同研究の一環として、エネルギー原料用として高収量のサトウキビを共同で開発しました。続いて、アサヒビール(株)では、このサトウキビを使用して、製糖と組み合わせて燃料用エタノール製造を行う実証試験を、R&D本部技術開発研究所(所長:滝口進、所在地 茨城県守谷市)において4月より開始します。
「将来に向け、持続的に発展可能な資源循環型社会を築く」という観点から、太陽光や風力などの自然エネルギーとともに、バイオマス(量的生物資源)エネルギーは、再生可能エネルギーとして、その普及が期待されています。政府は、平成14年12月に「バイオマス・ニッポン総合戦略」を閣議決定し、国家プロジェクトとして、その普及を推進する方針を示しました。生物資源を原料としたエタノールをガソリンに混合した「バイオマスエタノール混合ガソリン」を自動車用燃料に使用すれば、化石系燃料から発生する二酸化炭素排出量を抑制できることや、既存のインフラを利用できることから、政府は実用化計画を推進しています。
平成14年より、アサヒビール(株)と九州沖縄農業研究センターは、原料として適切なサトウキビについての共同研究を開始しました。まず、九州沖縄農業研究センターが農林水産省の「新需要創出総合研究」、「農林水産バイオリサイクル研究」等のプロジェクト研究予算によって育種に成功した、従来種に比べてバイオマス生産量が2倍以上のサトウキビ品種群「モンスターケーン」をアサヒビール(株)と共同で評価・選抜して、エネルギー原料に適した高収量のサトウキビ「エネルギー用モンスターケーン」(別紙参照)を開発しました。
次のステップとして、平成16年4月より、アサヒビール(株)R&D本部技術開発研究所では、小規模プラントを新設し、エタノール製造の効率化のための、発酵技術をはじめとした要素技術開発と、製造プロセスの実証を行います。製造プロセスは、副産物であるバガス(サトウキビから甘汁を搾ったあとのかす)の燃焼エネルギーで製糖やエタノール製造のエネルギーを賄うように設計し、外部からのエネルギー供給が要らない、環境に極めて優しいものとします(別紙参照)。これにより、現状の砂糖生産量は維持したうえに、エタノールを高効率で製造し、単位耕作面積あたりのバイオマス活用度の最大化を図ることを目指します。
アサヒビール(株)では、プロセスの開発・実証を行った上で、平成17年以降、よりスケールアップしたパイロットプラントでの実証試験を行う考えです。その過程で製造プロセスの更なる効率化を進め、経済性を満たす事業モデルの確立を目指します。また、九州沖縄農業研究センターでは、モンスターケーンの品種選抜と試験栽培をさらに継続し、一層進んだ実用技術として完成させます。
両者では、将来的には、このプロセスで製造したエタノールをガソリンに一定割合で混ぜて自動車燃料として利用し、日本におけるバイオマス原料の生産からエタノール製造およびその利用までの総合的なバイオマスエネルギー活用モデルの創出を目指します。さらに、そのモデルの実現・普及を通じて、温暖化ガスの排出を抑制し、持続可能な資源循環型社会の実現に貢献できることを目指します。