「カンキツグリーニング病」は熱帯地域の柑橘類に大きな被害を与えています。我が国では、この病気は昭和63年に沖縄県の西表島で初めて発生が確認され、今では鹿児島県の徳之島まで分布が広がっています(図1)。沖縄県では、シークワーシャーに本病が発生し、大きな問題となっています。この病気は、ミカンキジラミという昆虫が媒介して感染が広がりますが、有効な農薬がないことから、感染樹をできるだけ早く発見し取り除くことが拡大防止の重要な対策となります。
今回、九州沖縄農業研究センターでは、感染を速やかに見つけるために、LAMP法を利用した新しい遺伝子診断技術を開発しました。
背景とねらい
カンキツグリーニング病は、症状が鉄や亜鉛の欠乏症と類似し、肉眼による診断は困難です。病原体は培養できないため、培養による感染の確認もできません。感染の疑われる個体を検定植物(オーランドタンゼロ)に接ぎ木して感染を調べることができますが、診断に時間がかかるのが欠点です。このため、現在は、PCR法により病原体に特異的な遺伝子の有無を調べ、感染を診断しています。
近年、より迅速で簡易な遺伝子診断法であるLAMP法が開発されたため、これを利用したカンキツグリーニング病の診断技術の開発に取り組みました。
成果の内容
LAMP法を利用した新しい診断技術には以下のような特徴があります。
- PCR法で必要な高価な機器は不要であり、一定温度で反応が進行させるための恒温機があれば診断できます。
- DNAと反応する試薬(AzurB)を用いることで、診断結果が肉眼で容易に判定できます。
- PCR法と比較して3分の1程度の時間で診断でき、診断精度もPCR法と同等以上です。
今後の展望
LAMP法を利用したカンキツグリーニング病の診断技術は研修会を通じて、九州沖縄地域の公立試験場や植物防疫所などに技術移転を行っています。
また、カンキツグリーニグ病が深刻な問題となっているベトナムおよびインドネシアの研究者に技術講習を行っています。