プレスリリース
サツマイモ茎葉で高品質な豚肉を生産

- 茎葉の機能性成分を利用して夏季の肉質低下を緩和 -

情報公開日:2006年3月22日 (水曜日)

サツマイモの茎葉はポリフェノールなどの強い機能性成分を有することが知られています。今まで廃棄処分されてきたサツマイモ茎葉を豚の飼料として有効利用することにより、夏の暑熱環境下でも豚肉の酸化を緩和できることを明らかにしました。

 

背景とねらい

サツマイモはアントシアニン系色素などのポリフェノール類を含み、それらの成分は抗酸化活性などの機能性を示します。
しかし、機能性成分を多く含くむ茎葉などの地上部は緑肥として畑地に還元されるだけで、茎葉の持つ機能性をうまく活用しているとはいえません。そこで、サツマイモ茎葉(写真)を肥育豚の飼料原料として利用し、機能性成分の生理活性をブタ生体内で発現させて、豚肉の品質向上を図ることを目的に研究を進めました。

 

成果の内容

九州沖縄地域の夏季のような暑熱環境下では、ブタはより多くの酸化ストレスを受けており、生産される豚肉に含まれる脂質過酸化物量は増加します(図1)。そこで、酸化ストレスをより多く受けている暑熱環境(環境温度摂氏32度、相対湿度約60%)下で肥育豚(体重約60~110kg)に乾燥したサツマイモ茎葉粉末を飼料に5%添加して給与したところ、以下の結果が得られました。

  • 飼料中のポリフェノール量は約1.4倍、アントシアニン量は約10倍に増加(図2)。
  • 肥育中、とくに、肥育前期の採食量を増やすと成長を促進する傾向を示す。
  • 生産される豚肉に含まれる脂質過酸化物の量を減少させる(図3)。

 

今後の展望

サツマイモ茎葉に含まれる機能性成分は強い抗酸化性を示す他にも、動物にとって好ましい機能も有することが示されつつあります。これらの機能性を利用して、ブタの代謝異常などを予防し、健康的に肥育することにより、一層、安心で安全な豚肉の生産につながるものと期待できます。

 

学会発表

この内容は3月29日(水曜日)~31日(金曜日)に九州大学にて開催される日本畜産学会第106回大会で発表します。

 


詳細情報

karc-press-06-03-22-8写真 試験に用いたサツマイモ茎葉(系統名:95K1)

karc-press-06-03-22-9図1 暑熱環境下で飼育したブタにより生産される豚肉中の脂質過酸化物量

karc-press-06-03-22-10図2 一般的な肥育豚用飼料にサツマイモ茎葉を5%添加した時の総ポリフェノール量とアントシアニン量の変化
* 括弧内の数字は飼料中の量を100とした場合の相対値
** ポリフェノール量はクロロゲン酸当量、アントシアニン量はシアニジン3-グルコシド当量として計算した

karc-press-06-03-22-11図3 暑熱環境下のブタにサツマイモ茎葉5%添加給与することにより生産される豚肉中の脂質過酸化物量の変化

 

用語解説

脂質過酸化物(LPO):
生体内で生成するフリーラジカルなどにより脂質が酸化されてできる最終産物で、これらが生成されると、変色、臭い、ドリップロス増加などの肉質劣化につながる。

サツマイモ茎葉ポリフェノール:
サツマイモ茎葉に含まれるポリフェノール成分で、分子内にカフェ酸を含有するカフェ酸誘導体といわれるもの。サツマイモ茎葉には、カフェ酸、クロロゲン酸(図)、ジカフェオイルキナ酸、トリカフェオイルキナ酸が存在する。

アントシアニン系色素:
紫サツマイモ、赤キャベツ、ブドウなどに含まれる紫色の色素。紫サツマイモのアントシアニンには、肝機能改善効果、血圧上昇抑制効果、血液サラサラ効果など多くの健康機能性があることが知られている。