プレスリリース
沖縄で新鮮なイチゴが食べられる

- 研究成果を活用したイチゴ栽培が始まる -

情報公開日:2004年12月25日 (土曜日)

要約

沖縄では、冬期でも簡易なパイプハウスでイチゴ栽培は可能であり、品種としては「さちのか」が適しています。11月1日前後にハウスに植えると、1月から 4月まで新鮮なイチゴが収穫できます。また、低温処理した苗を使えば12月からの収穫も可能です。土の中の養分状態に応じた肥料を施すことで3t/10a 近い収量が得られます。その普及現場を紹介します。


詳細情報

背景・ねらい

沖縄では、これまでイチゴは栽培されていなかったことから、県外から移入されています。また、冬期 には熱帯性果実 の端境期で観光客向けの地元産お土産が品薄となっています。 そこで、平成10~14年度の地域先導技術総合研究「亜熱帯における野菜・花き作導入による高収益農業技術の確立」の中で、新しくイチゴ栽培技術を取り 入れ高収益営農を成立させるため、安定生産技術の開発に取り組んできました。平成15~16年度にはその成果のフォローアップを行い技術の定着に努めまし た。その結果、沖縄でイチゴのモデル栽培が始まり、普及へと進んでいます。

成果の内容・特徴

  • 沖縄での冬期のイチゴ栽培 に は、早生で休眠が浅く、気温が高くても果実が硬くて日持ちがよく、食味もよい品種「さちのか」が適しています。
  • 苗の生産方法は、果実の生産株とは別に、低温となる場所で親株を越冬させてランナーの発生を促進し、このランナー苗をポット植えで生育させます。40株程 度の親株から2段階の増殖により、10a分の生産用苗(約7,000株)に増やします。
  • 8~9月にポット植えした苗を11月1日前後に定植すると、1月から収穫が始まります。冬期でも簡易なパイプハウスで栽培は可能であり、加温や電照、ジベ レリン処理は不要です。
  • ポット苗を日長8時間で、摂氏15度の温度に20日間以上処理(短日夜冷処理)後、10月中旬に定植すると、クリスマス前から収穫できます。
  • イチゴ品種「さちのか」の病害については、高温多湿下で炭そ病が、栽培期間を通してうどんこ病が発生しやすいので早めの防除が肝要です。
  • 宜野座村の農家で栽培試験を行ったところ、4月までに3t/10a近い収量が実証されています。

今後の展開または展望

宜野座村の「農業後継者等育成センター」等を核として、沖縄にイチゴの栽培技術を普及・拡大させ、沖縄県産イチゴの定着を目指します。

用語解説

ランナー

通常栽培されているイチゴでは、トマトやキュウリ等のように種子から育てた苗を利用するのではなく、春~夏に親株の株元から発生する「ランナー」と呼ばれる長く伸長した側枝の先端に形成される子株を切り分けて生産苗に仕立てます。

ジベレリン処理

九 州以北のハウスイチゴ栽培では、厳冬期は低温や短日のため植物体が休眠状態になり、わい化してほとんど収穫できなくなります。これを回避するため、電照に よる長日処理、暖房機による加温、あるいは植物ホルモンの一種であるジベレリンの散布が行われます。沖縄では栽培期間中の気温が高いため、真冬でもこのよ うな処理は必要ありません。

短日夜冷処理

温帯原 産のイチゴは、通常は秋季の自然環境条件(気温が低下し、日長が短くなる)で花芽を形成します。九州以北のハウスイチゴ栽培では、11月下旬~12月上旬 の早期から収穫するため、日長を8~10時間程度、夜温を摂氏15度程度に制御することにより花芽形成を促進する技術が広く利用されています。

炭そ病

高温期に多く発生し、発病すると短期間で枯死に至る場合が多く、薬剤のみで完全に防除することが難しい、イチゴ栽培で最も恐ろしい病害です。かん水や雨滴で速やかに感染が拡大するため、発生回避にはベンチや雨よけ施設を利用した育苗が有効です。

うどんこ病

葉や果実に白い粉をふいた様な病斑を形成し、果実に発生すると商品価値が完全に損なわれます。高温期には病徴がみえなくなるので油断しがちですが、秋になると再発してくるため、育苗期間中は定期的な薬剤防除が必要です。

図1 沖縄県におけるイチゴ栽培の作業体系

図1 沖縄県におけるイチゴ栽培の作業体系

写真1 店頭で販売される沖縄県産イチゴ

写真1 店頭で販売される沖縄県産イチゴ

写真2 ランナーの発生状況

写真2 ランナーの発生状況

写真3 ポット栽培

写真3 ポット栽培

写真4 夜冷処理の状況

写真4 夜冷処理の状況