育成のねらい
稲ホールクロップサイレージ(稲発酵粗飼料)は、水田で生産できる自給飼料として、畜産の体質強化や地域環境保全に寄与することが期待されています。九州地域は稲作と畜産ともに盛んな地帯であり、飼料イネについても普及の先進地帯です(2003年の飼料イネ作付面積約2600ha)。「ニシアオバ」は九州向けの稲発酵粗飼料専用品種として開発しました。
来歴の概要
「ニシアオバ」は「北陸130号」(後の「オオチカラ」)とSLG9(後の「ひとはな」)という、ともに米が大粒で収量の多い両親の交配組み合わせから選抜・育成しました(旧系統名:西海204号)。
命名の由来
「ニシアオバ」の名は九州地域に普及する飼料イネ品種となることを願って命名しました。“ニシ”は普及地域の九州を、“アオバ”は茎葉も利用する飼料用品種であることを表しています。
新品種の特徴
- 出穂期は「ニシホマレ」より2日程度早く、九州地域では“中生の晩”に属します。
- 「ニシホマレ」に比べ、稈長は10cm程度長く、子実とワラを合わせた全重は「ニシホマレ」よりも15%多収です。推定TDN(可消化養分総量)含量は「ニシホマレ」と同程度で、TDN収量も「ニシホマレ」より約15%多収です。
- 脱粒しにくいため、飼料用の収穫機でも収穫ロスが少ない特長があります。
- 米一粒の重さが一般の主食用品種の1.5倍ほど程度ある大粒です。このため主食用品種と識別しやすい特長があります。またこぼれた種子が来年圃場で発芽することが少ない性質を持ち、食用米への混入の危険が少ないと考えられます。
- ホールクロップサイレージの発酵品質はロールベーラ、サイロ等いずれの調製法をとっても良好で、牛の嗜好性も比較的良好です。
今後の展開(普及の見通し)
識別性を備えたホールクロップサイレージ用水稲として九州地域で普及が期待されています。現在のところ、飼料作物として大分県で150haの普及が見込まれています。
草姿
(左:「ニシアオバ」、右:「ニシホマレ」)
籾および玄米
(左:「ニシアオバ」、右:「ニシホマレ」)