育成のねらい
暖地・温暖地の小麦は、主にうどん用品種が栽培されているが、国産小麦の生産と需要拡大を図るには、パンや醤油醸造及び中華めん用などに適した硬質小麦品種が求められている。1999年に育成した硬質小麦品種「ニシノカオリ」は、菓子パンやロールパン及び醤油醸造用などとして作付けが拡大しているが、実需者からはパン用として広く利用可能な製パン適性の高い品種が望まれていた。そこで、製パン適性の一層の改良と、早生で耐倒伏性が優れ、蛋白質含有率の高い硬質小麦品種の育成を行った。
来歴の概要
「ミナミノカオリ」は、高蛋白質、多収、うどんこ病抵抗性、高製粉性、良粉色を育種目標として、1991年度に「Pampa INTA」に「西海167号」を交配し、派生系統育種法により選抜固定を図り育成した硬質小麦品種で、小麦農林160号として登録された。
命名の由来
親品種「Pampa INTA」を南米アルゼンチンから導入したこと、普及地帯が暖地・温暖地であることを表す「南」と、パンや醤油のよい香りを示す。漢字で表記する場合は「南の香」とする。
新品種の特徴
「農林61号」と比較して、次のような特徴がある。
- 播性の程度はIの春播性で、出穂期は3日、成熟期は2日程度早いやや早生である。
- 稈長と穂長は短く、穂数はやや少ない。耐倒伏性が強く、褐ふである。
- 粒の形は中、粒大はやや大、粒の色は褐色で、粒質は硝子質である。
- 千粒重は大きく容積重はやや大きいが、収量はやや少ない。
- 縞萎縮病に強く、赤さび病とうどんこ病にはやや強く、赤かび病にはやや弱い。穂発芽性はやや易である。
- 製粉歩留とミリングスコアはやや高い。60%粉の灰分がやや多く、粉の黄色みは少ない。生地特性が優れ、パン用硬質小麦の特徴を備えている。
- パンの比容積(ふくらみ)や官能試験の評点が良く、「ニシノカオリ」より製パン適性が優れる。また、原麦及び60%粉の粗蛋白質含有率が高く、醤油醸造用にも適する。
普及の見通し
大分県と広島県で奨励品種に採用予定で、パン、中華めん及び醤油用として約350haの作付けが予定されている。また、九州各県でパン用品種として期待されている。