育成のねらい
高アントシアニ ンかんしょの機能性が明らかになるにつれ、高アントシアニンかん しょの栽培が多くなってきている。しかし、まだ収量性など農業的形質の優れた高アントシ アニンの育成品種は「アヤムラサキ」のみである。しかし、「アヤムラサキ」は、細長く条溝が深いため、収穫や加工適性にやや難点がある。そのため、いもの 形など外観の優れた加工適性の高い品種の育成が要望されている。そこで、高アントシアニンで加工適性の優れた加工用品種を育成する。
来歴の概要
高アントシアニンの「アヤムラサキ」を母、多収、高でん粉の「シロユタカ」を父として平成5年に人工交配し、選抜した系統である。1998年以降「九州132号」の系統名で、公立農業試験研究機関などで地域適性並びに加工適性を検討してきた。
命名の由来
紫色素を非常に多く含む、外観の良いかんしょ品種を表す。漢字表記は“紫優”。
新品種の特徴
- ア ントシアニン含有量の多い加工用品種である。
- いもの形状は“紡錘形”、外観は“上”で、「アヤムラサキ」に比べ優れ、収穫し易く、加工適性も優れる。
- ペースト、パウダーなどの加工用としての利用に適するが、蒸しいもの食味は劣る。
- 上いも重は「アヤムラサキ」をやや上回り、切干歩合は「アヤムラサキ」より2~4ポイント高い。
- 病虫害抵抗性は、サツマイモネコブセンチュウおよびミナミネグサレセンチュウに“強”、黒斑病に“やや強”である。
- 萌芽性は“中”、貯蔵性は“やや易”である。
- いもをそのまま圃場に植え付ける直播栽培に適する。
今後の展開
全国のかんしょ作地域に適するが、当面はかんしょ生産の多様化、需要拡大および生産振興を期待して認定品種として採用した茨城県で30ha程度の普及が見 込まれている。九州地域でも、加工用アントシアニン品種としての栽培が検討されている。
(地上部)