育成のねらい
わが国暖地向けの飼料用とうもろこしには、台風による倒伏がないことと、多雨・寡照条件下でも病気に強いことが必要である。九州農業試験場(現九州沖縄農業 研究センター)では中生の晩に属する安定多収品種「はたゆたか」を平成8年に育成したが、その後この熟期の普及品種は耐倒伏性が向上し、「はたゆたか」よ り強い耐倒伏性が求められるようになった。そこで、「はたゆたか」と同じ熟期で耐倒伏性と病害抵抗性に強い品種を育成する。
来歴の概要
九州農業試験場育成の組合せ能力の高いデント種自殖系統「Mi44」を母、同じく「Mi62」を父として平成7年に交配し、組合せ能力検定試験の結果、有望 と認められたので、「九交103号」の系統名を付して、平成9年~12年に病害抵抗性検定試験及び地域適応性検定試験を国公立試験研究機関で実施した。
命名の由来
台風や長雨に強く、安心して利用できる、これまでにない夢の品種を表す。
新品種の特徴
- 熟期は中生の晩で、絹糸抽出期は「はたゆたか」及び「G4655」より1日早い。
- 耐倒伏性は「強~極強」で、「はたゆたか」及び「G4655」より強い。
- ごま葉枯病には「強」で、「はたゆたか」並で「G4655」より強い。
- さび病には「強」で、「はたゆたか」及び「G4655」より強い。
- 紋枯病には「はたゆたか」よりやや強く「G4655」より強い。
- 乾物収量は、ほぼ「はたゆたか」及び「G4655」並である。
- 茎葉と子実を含めた可消化養分含量は、「はたゆたか」並かやや高く「G4655」より2ポイント余り高い。
今後の展開
平成12年から独立行政法人家畜改良センターにおいて親品種の増殖を行っており、平成14年から中国において一代雑種「ゆめつよし」の種子生産を行う。種子生産が軌道に乗った時点で、九州、四国及び中国地域各県で奨励品種に採用の見込みである。
「ゆめつよし」の草姿
(平成12年7月23日、九州沖縄農業研究センター)
「ゆめつよし」の雌穂及び粒