プレスリリース
西日本向きの低アミロース米「ぴかまる」を開発

- ご飯の粘りが強く、多収で病気にも強い -

情報公開日:2014年4月 3日 (木曜日)

ポイント

  • 「ぴかまる」は、「ヒノヒカリ」等の一般のうるち米品種よりも、デンプンの一種であるアミロースの含有率が低いため、ご飯の粘りが強い特性があります。
  • 「ヒノヒカリ」に比べ、収量が約10%多く、食味は同等以上です。また直播適性に優れ、いもち病と縞葉枯(しまはがれ)病にも強くなっています。
  • 家庭用の他、ブレンド用・業務用の利用が期待され、九州の3県で試作が開始されています。

 

  • 低アミロース米1)はご飯の粘りが強く、冷めても硬くなりにくい特徴があることから、家庭用のお米のほかに、ブレンド用や業務用としても需要があります。しかし、九州では安定して栽培できる特性の優れた低アミロース米品種がこれまでなく、この地域に適した新品種が望まれていました。
  • 生産適地は九州をはじめとする西日本の平野部で、出穂期・成熟期は「ヒノヒカリ」と同程度の中生(なかて)です(写真1)。九州地域の主要品種「ヒノヒカリ」に比べ倒伏に強く、移植栽培では9%、水田に直接種もみをまく「直播(ちょくはん)栽培」では13%収量が多い特長があります(表1)。また、稲の主要な病害であるいもち病2)縞葉枯病3)に強く、農薬の使用を減らせる可能性があります(表2)。
  • 良食味品種である「ヒノヒカリ」に比べてご飯の粘りが強く、軟らかい特長があり、ご飯の食味も優れます(図1)。玄米は、低アミロース米の特徴でやや白濁しますが、粒ぞろいが良く、米の外観品質は、「ヒノヒカリ」に優ります(写真2)。
  • 既に、福岡県、熊本県、鹿児島県の農業生産法人で「ぴかまる」の試作が開始されており、平成26年度からは岡山県でも試作が始まり、当面は数十ヘクタールの作付が見込まれます。種子の入手や試作については下記の研究担当者あるいは広報担当者へお問い合わせ下さい。

関連情報

予算:農林水産省委託プロジェクト「新農業展開ゲノムプロジェクト(政策ニーズに合致したイネ新品種の開発)(平成20~22 年度)」、運営費交付金

種苗法に基づく品種登録出願:出願番号:第26820号


詳細情報

写真1 移植栽培での草姿 写真2 ぴかまるの籾と玄米
写真1 移植栽培での草姿
左:「ヒノヒカリ」、右:「ぴかまる」
写真2 ぴかまるの籾と玄米
左:「ヒノヒカリ」、右:「ぴかまる」

 

表1 「ぴかまる」の栽培特性表1 「ぴかまる」の栽培特性
注)倒伏:0(無)~5(完全倒伏)

表2 「ぴかまる」の耐病性
表2 「ぴかまる」の耐病性

 

図1 「ぴかまる」のご飯の食味特性(育成地)
図1 「ぴかまる」のご飯の食味特性(育成地)
注)値が大きい方が優れる(粘り:強い 硬さ:硬い)

 

用語解説

1)低アミロース米
日本の一般のうるち米のアミロース含有率は15~20%程度、もち米は0%です。アミロース含有率が低いほどご飯の粘りが強くなります。アミロース含有率がうるち米ともち米の中間となる、数%~15%程度の米を低アミロース米と呼びます。

2)いもち病
我が国で被害が大きい稲の主要病害の一つです。現在、日本ではほとんどの場合薬剤により防除されていますが、抵抗性品種の利用で薬剤に頼らずに発病を抑制することが可能です。

3)縞葉枯(しまはがれ)病
ウイルスによる稲の病害の一種です。ヒメトビウンカが媒介する縞葉枯病ウイルスは、ウンカが稲を吸汁することにより稲に感染し、発病します。