ポイント
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- ヒメトビウンカは、イネ縞葉枯病などのウイルス病を媒介するイネの重要害虫です。近年、西日本では従来の殺虫剤が効きにくいヒメトビウンカが5月末から6月初め頃に中国東部から多量に飛来し、イネ縞葉枯病が多発する問題が起きています。イネ縞葉枯病を抑制するためには、この時期のウンカ成虫の海外からの飛来を予測し、飛来虫を迅速、適切に防除することが大切です。また、精度の高い飛来予測を行うためには、成虫の飛び立ち時期を予測し、かつ1日のうちどの時間帯に飛び立つかを解明することが必要です。これは、虫を運ぶ風は常に変化し、飛び立ちのタイミングが直接予測結果に影響するからです。そこで、飛び立ち時期の予測手法と飛び立ち時間帯を明らかにし、ヒメトビウンカ飛来予測手法を確立するとともに、飛来情報を病害虫防除所などに通知する仕組みを作ることを目的として研究を行いました。
- ヒメトビウンカは主に夕方に飛び立つことが分かりました(図1)。ヒメトビウンカは成虫になってから飛び立ちますので、成虫になる羽化時期を有効積算温度から予測する手法を開発し、ウンカが飛来源から飛び立つ時期を予測することができました(図2)。これら飛び立ちのタイミングや風、気温のデータを用いてウンカの移動を計算する飛来予測モデルを作成し、それを基にJPP-NETヒメトビウンカ飛来予測システムを開発しました(図3)。システムでは、ヒメトビウンカの飛来が予測されると電子メールで全国の病害虫防除所に通知されます。
- 予測される飛来時期と地域の情報は、飛来警戒、飛来後の適切な薬剤選択、防除の必要な地域の推定、防除時期の決定、耕起によるひこばえ(再生稲)の除去、雑草管理等の対策に役立てられます。平成26年5月現在、ヒメトビウンカの主要飛来地域を含む35県36機関、1行政機関、1独立行政法人が電子メールを登録し、飛来予測メールを受信しています。
関連情報
本研究は、農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「ヒメトビウンカの海外からの飛来を予測する実運用情報提供システム(課題番号24018)(平成24~25年度)」の研究費補助を受けて実施されました。