ポイント
農研機構と霧島酒造株式会社は、芋焼酎の原料用品種「霧N8-1」の農業特性を向上させた新品種「霧N8-2」(旧系統名:九州204号)を育成しました。「霧N8-2」を原料とした焼酎は、マスカット様の香りを主体とする、フルーティーな香味となり、「霧N8-1」製の焼酎よりも香り成分を多く含みます。また、「霧N8-2」は、「霧N8-1」よりもでん粉歩留が高く多収であり、サツマイモ基腐病に対して抵抗性があることから、原料の安定生産にも寄与します。
概要
焼酎原料用さつまいもの主力品種「コガネセンガン」を原料とした芋焼酎は、いもの風味や独特の甘味といった酒質が高く評価され、絶大の人気を博しています。その一方で、焼酎の香味に対する消費者ニーズは多様化してきており、市場では「コガネセンガン」とは異なる香味を備えた焼酎も求められています。紫肉のサツマイモを原料としたワインやヨーグルト様の香りのする焼酎、橙肉のサツマイモを原料としたトロピカルフルーツ的な香りのする焼酎など、特徴的な香味を有する焼酎は新たな需要の開拓に貢献しています。
そこで、農研機構と霧島酒造株式会社は、霧島酒造株式会社が独自開発したマスカット様の香りを特徴とする焼酎の原料用品種「霧N8-1」の酒質特徴を有しながら、収量性やでん粉歩留1)などの農業特性や醸造特性を向上させた品種の開発に取り組みました。
今回、農研機構と霧島酒造株式会社が共同開発した新品種「霧N8-2」を原料とすると、「霧N8-1」の焼酎と類似したリナロール2)を主体とするピュアなマスカット様の香りがする、フルーティーな香味の焼酎ができます。また、香り成分であるモノテルペンアルコール類3)が「霧N8-1」の焼酎よりも多く含まれているため、マスカット様の香りがより強く感じられます。さらに、「霧N8-2」のでん粉歩留は「霧N8-1」よりも高く、酸敗4)のリスクが低いため、冬季以外でも焼酎を造ることができます。また、「霧N8-2」は「霧N8-1」よりも多収で、外観品質が優れ、サツマイモ基腐病5)に対して「霧N8-1」と同等の"やや強"の抵抗性があるなど、農業適性にも優れているため、原料の安定生産にも寄与します。
霧島酒造株式会社のニュースリリースはこちら:https://www.kirishima.co.jp/news/2024062801.html
関連情報
予算:資金提供型共同研究「特徴的な酒質となる焼酎原料用カンショ系統の開発」2019年4月~2024年3月
品種登録出願番号:「第36872号」(2023年5月11日出願、2023年10月5日出願公表)