プレスリリース
(お知らせ) 農研機構出資のベンチャー「株式会社農研植物病院」設立

- 植物検疫検査業務を通じて農産物輸出拡大に貢献 -

情報公開日:2024年1月30日 (火曜日)

農研機構
(株)農研植物病院

ポイント

  • 農研機構の出資・支援を受けた、農研機構発ベンチャー企業「株式会社農研植物病院」を本年1月9日に設立しました。
  • 同社は、2024年度から輸出企業・種苗会社・登録検査機関に向けて輸出検疫検査技術開発・検査サービスを開始します。
  • ニーズが増大している植物検疫検査に対応することで、農産物輸出拡大に貢献します。

概要

農業・食品産業技術総合研究機構(理事長:久間和生)は、研究開発成果の社会実装を促進し農業・食品産業の競争力強化と収益力向上を進めるとともに、収益力向上の適正な対価の獲得により研究開発を持続的に行うシステムを構築するため、「農研機構発ベンチャー企業認定制度」を整備し、厳格な審査の下、農研機構が開発した研究成果を活用するベンチャー企業(スタートアップ)に対する出資や支援を行っています。また、産業界から招いた新規事業の立ち上げに豊富な経験を持つ人材をスタートアップ管理役として配置し、農研機構職員によるスタートアップの育成にも取り組んでいます。

この度、本制度による出資・支援を受けた農研機構発ベンチャー企業として、株式会社農研植物病院(以下、「農研植物病院」とする。)を設立しました(1月9日付で法人登記完了)。代表取締役(CEO)には、農研機構顧問でもあり民間企業で新事業開発の実績を持つ上山健治が就任します。

農研植物病院は、輸出企業・種苗会社・登録検査機関に向けて輸出検疫検査技術開発・検査サービスを2024年度より開始します(現在、農林水産省に登録検査機関の申請準備中)。農林水産物・食品の輸出は年々増加傾向にあり、2030年の輸出額5兆円の政府目標に向け官民を挙げて輸出拡大に取り組む中、検査対応の強化のため2023年4月1日付で改正植物防疫法が施行され、輸出植物等の検査の一部を民間企業などの登録検査機関が実施できるようになりました。農研植物病院は、農研機構の植物病理学の専門家を取締役(CTO)や社員とし、高い研究開発力と技術力を活かし、検査手法の開発や、病原体濃度が低い検体の検査といった技術的難易度が高く他機関が対応できない検査を中心に、顧客ニーズに対応した業務を行います。これにより、農産物のさらなる輸出拡大に貢献します。

農研植物病院の立ち上げメンバー
リアルタイムPCR装置を用いた
検査の様子

農研植物病院は、今後計画的に体制を強化し、輸出検疫技術開発・検査サービスのほか、将来的には、種苗会社等に向けた種子種苗等の国内流通向け検査サービス、農業法人等に向けた総合的病害虫対策コンサルティングサービス、病害虫防除技術等の教育サービス等に業務を拡大する予定です。

株式会社農研植物病院の概要

名 :
株式会社農研植物病院(のうけんしょくぶつびょういん)
NARO PLANT HOSPITAL COMPANY,LIMITED
設立日 :
令和6年1月9日(設立登記申請日)
代表取締役(CEO) :
上山 健治(かみやま けんじ)
取締役(CTO) :
眞岡 哲夫(まおか てつお)
資本金 :
600万円
所在地 :
茨城県つくば市観音台2丁目1番地18(農研機構観音台中央第2本館内)
業務内容 :
  • 輸出検疫技術開発・検査サービス
  • 種子種苗等の国内流通向け検査サービス
  • 総合的病害虫対策コンサルティングサービス
  • 病害虫防除技術等の教育サービス

関連情報

予算 : 農林水産省「研究開発とSociety5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)(国産農産物の輸出拡大に向けた植物検疫スタートアップの創出)」JP23836761、生研支援センター「スタートアップ総合支援プログラム(SBIR支援)」JP21488258

問い合わせ先
広報担当者 : 農研機構本部広報部広報課報道チーム 飯田・森田

関係者の紹介と抱負

農研機構
理事長 久間 和生(きゅうま かずお)

(前 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議 常勤議員
元 三菱電機株式会社 代表執行役副社長)

【略歴】

東京工業大学大学院 博士課程電子物理工学専攻修了(工学博士)。1977年:三菱電機株式会社入社。人工網膜チップ等の研究開発と事業化を推進。研究所所長、開発本部長等を歴任。2011年:同社代表執行役副社長に就任。2013年:内閣府総合科学技術会議議員(常勤)、2014年:内閣府総合科学技術・イノベーション会議議員(常勤)。2018年4月:農業・食品産業技術総合研究機構 理事長。

抱負

外部有識者・専門家も活用し農研機構発ベンチャーを育成する制度を整備しました。これを活用して次々とベンチャー企業を世に出していきたいと考えています。第1号の農研植物病院には引き続きサポートを行い、わが国の農産物輸出拡大や侵入病害虫対策に貢献できる法人に育てていきたいです。

農研機構
スタートアップ管理役 赤松 宏恒(あかまつ ひろつね)

【略歴】

1980年東京大学卒業。株式会社東芝に入社し、商品企画、マーケティング、新規事業、経営企画、経営変革、技術企画、技術戦略などに従事。Dynabookなどの企画・開発チームを指揮。本社部長、関連会社であるエンジニアリング会社取締役を退任後独立。大学院講師、多数の新規事業立上げに携わった豊富な経験を持つ。2023年より農研機構スタートアップ管理役に就任(現職)。

抱負

研究者の評価は学術的貢献と社会的貢献があります。学術的貢献は学会や論文・特許などの晴れの舞台がありますが、世の中の人に喜んでもらう、価値を認めてもらう、このような社会実装も研究者として喜びとするものです。幸いイノベ法を始め法整備、そして農研機構としても道付けができたのでこれから推進を図っていきたいと考えています。

農研植物病院
代表取締役(CEO) 上山 健治(かみやま けんじ)

【略歴】

1985年同志社大学卒業。旭化成株式会社入社。グループ会社の海外営業部長、常務取締役等を務め、本社にて新事業開発部長、食農プロジェクト長及び同顧問を歴任。2023年4月:農研機構事業開発部非常勤顧問に就任(現職)。総合化学メーカーのトップ企業で事業経営に携わり、農研機構との共同研究でも企業側責任者を務めるなど、事業開発・マネジメントの手腕を発揮してきた。

抱負

農研植物病院代表(CEO)として、「日本の農業を強くしたい」という思いがあります。植物病理学の研究成果である病害虫検査技術に加えて、農産物の輸出促進が図れるバリューチェーンを構築し、世界各国に日本のおいしい農産物を届けたい。食と農の豊かさを享受できる社会の実現を目指し、日本の農業の発展に貢献していきたいと考えています。

農研植物病院
取締役(CTO) 眞岡 哲夫 (まおか てつお)

(生物環境調節学博士、技術士(農業部門 植物保護)、植物医師)

【略歴】

1984年:東京農業大学卒業。1985年:農林水産省入省。植物病理学を専門とし、ジャガイモの重要病害虫の診断・防除法等の研究開発、生産現場への社会実装に従事。農研機構北海道農業研究センター生産環境研究領域領域長、同センター企画部部長、同センター地域戦略部部長等を歴任。2021年:同機構植物防疫研究部門所長に就任。2023年4月:同機構本部 総括執行役兼みどり戦略・スマート農業推進室長(現職)。

抱負

40年間植物防疫法にかかる指定種苗・レギュラトリーサイエンス研究に従事してきました。2030年の輸出額5兆円の政府目標達成のためには、輸出検疫検査を精確かつスピーディーに実施する必要があり、登録検査機関の役割が重要です。これまでに培ってきた知識経験を活かし、農産物輸出拡大に貢献したいと考えています。