ポイント
- 農研機構ではこれまで、民間企業との共同研究で生じた共有の知的財産権(以下「共有知財」)については、共有者である民間企業(以下「共有者」)が実施(利用)する場合には一律に実施(利用)料を請求していましたが、農研機構が第三者企業へ自由に許諾可能な場合は、共有者の実施に対して実施料を請求しないこととしました。
- また、共有知財の第三者への実施許諾について、あらかじめ同意が得られている場合には、各権利者がそれぞれ自由に第三者と許諾契約を締結可能としました。
概要
農研機構は、令和4年12月の農林水産技術会議「農林水産研究における知的財産に関する方針」改定などの昨今の状況の変化を鑑み、新たに「知的財産・標準化に関する基本方針」としてノウハウを含む知的財産権や標準化に関する新しい基本方針を策定しました。
■新知財方針はこちら
https://www.naro.go.jp/collab/files/IPBasic_policy2024.pdf
その中で、民間企業との共同研究をより活性化し、円滑な社会実装に繋げるため、共同研究から生じた民間企業と農研機構が共有する共有知財に関する実施料などの取扱いを変更しました。
共同研究の活性化を通じて、民間企業との連携を強化し、研究成果の円滑な社会実装を積極的に推進していきます。
(1) 実施料について
これまで農研機構では、民間企業と農研機構の共有知財を共有者が実施する場合に、実施が独占的1)か非独占的2)であるかにかかわらず、一律に農研機構の持分に応じた実施料を請求する取扱いとしていました。このたび、農研機構がこの共有知財を自由に第三者企業へ許諾することができる場合には、共有者に対して実施料を請求しない取扱いを加えました(表1のア)。
なお、共有者がこの共有知財を非独占的に実施する場合であっても、農研機構が第三者企業へ許諾する際に共有者の同意が必要とされる場合には、これまで同様、農研機構の持分に応じた実施料を請求します(表1のイ)。
また、共有者がこの共有知財を独占的に実施する場合にも、これまで通り共有者に対し、独占の対価として農研機構の持分に応じた実施料を請求します(表1のウ)。
共同研究契約を締結して共同研究を開始した後に共有知財が発生した場合は、共有者は、下記の実施パターンを検討し共同出願するときに締結する共同出願契約等において、契約条項に反映することになります。
【表1】民間企業との共有知財の実施料の取扱い
共有知財の実施パターン | 旧取扱い | 新取扱い |
ア民間企業が非独占的に自己実施するパターン *農研機構は第三者へ自由に許諾できる場合 |
実施料を請求する | 実施料を請求しない |
イ民間企業が非独占的に自己実施するパターン *農研機構が第三者企業へ許諾する際に共有者の同意が必要とされる場合 |
実施料を請求する | 実施料を請求する |
ウ民間企業が独占的に自己実施するパターン *農研機構は第三者企業へ許諾できない場合 |
実施料を請求する | 実施料を請求する |
(2) 第三者へ許諾する際の契約締結者
農研機構と民間企業との共有知財について、農研機構と共有者の間であらかじめ同意が得られている場合には、各権利者がそれぞれ自由に第三者へ非独占的な実施を許諾可能としました(表2)。
【表2】共有知財をそれぞれが自由に第三者へ許諾する際の契約締結者の取扱い
契約締結者 | 旧取扱い | 新取扱い |
権利者(農研機構と民間企業)と第三者の全員で許諾契約を締結する | 農研機構または民間企業がそれぞれ自由に第三者と許諾契約を締結できる |