プレスリリース
白米からのバイオエタノール製造時における放射性セシウムの動態の解析

情報公開日:2012年3月16日 (金曜日)

ポイント

  • 放射性セシウム(セシウム134及び137。以下同じ。)を含む原料白米からバイオエタノールを製造し、最終産物となる粗留エタノールと蒸留残渣への移行動態を解析した結果、放射性セシウムは、粗留エタノールへの移行は確認されず、そのほとんどが蒸留残渣に残留することが確認されました。

概要

(独)農研機構食品総合研究所は、放射性セシウムを含む白米を用いてバイオエタノールの製造試験を行い、製造時における放射性セシウムの移行動態について解析しました。

放射性セシウムを含む白米粉末(221-222Bq/kg)を原料として、バイオエタノール製造を行い、最終産物となる粗留エタノールと蒸留残渣について放射性セシウム濃度を分析しました。

その結果、粗留エタノールでは検出限界(2.6Bq/kg)を超える放射性セシウムは検出されず、放射性セシウムのほとんどが蒸留残渣に残留していました。

関連情報

予算:農林水産省委託プロジェクト研究「地域活性化のためのバイオマス利用技術の開発II系(稲わら等の作物の未利用部分や資源作物、木質バイオマスを効率的にエタノール等に変換する技術の開発)」


詳細情報

背景

放射性セシウムを含む米からバイオエタノールを製造した場合の、粗留エタノール及び蒸留残渣中の放射性セシウム濃度を測定し、製造工程における放射性セシウムの移行動態を明らかにするとともに、燃料用としての利用の可能性を検討する。

結果の内容

  • 福島県農業総合センターが研究用に購入した玄米試料(福島県産試験用サンプル)の一部を入手し(品種名:ひとめぼれ、放射性セシウム濃度469Bq/kg)、これを精白し、粉砕した白米粉末をバイオエタノール製造試験に供試しました。
  • 食品総合研究所保有のゲルマニウム半導体検出器を用いた分析により、白米粉末の放射性セシウム濃度は221-222Bq/kgと計算されました。
  • 白米粉末300gから、1,220gの液化物、12.2%(v/v)のエタノールを含むもろみ1,110gを経て、85.5%(v/v)の粗留エタノール134ml(112g)及び蒸留残渣996gに変換される製造条件下で、澱粉液化、並行複発酵及び蒸留によるバイオエタノール製造試験を行いました。
  • 粗留エタノール134ml(112g)では、検出限界(2.6Bq/kg)を超える放射性セシウムの移行は確認されませんでした。それに対して、最終副産物となる蒸留残渣996gの放射性セシウム濃度は、72.1-73.2Bq/kgを示し、原料白米を100とした場合の放射性セシウムの移行割合は、108-110%となりました。

用語の解説

バイオエタノール
生物資源(バイオマス)を原料として製造される燃料用エタノール。

粗留エタノール
もろみを蒸留して得られるエタノール。燃料用途に供するためには、さらなる精製が必要となる。

蒸留
液体の混合物から沸点の差を利用してエタノール等の物質を分離・濃縮する方法。

蒸留残渣
もろみの蒸留によってエタノールを回収した後に残った部分。

澱粉液化
澱粉を高温下で糊状にしながら液化酵素(アミラーゼ)による加水分解処理を行い、澱粉を低分子化・液状化する工程。

液化物
澱粉液化工程後に得られる液状の生成物。

並行複発酵
発酵槽に糖化酵素と酵母を同時に加え、糖化(単糖生産)とエタノール発酵を同時に行う工程。

もろみ
エタノール発酵後のアルコールや酵母菌体を含む懸濁物。

参考データ

図 白米粉末からのバイオエタノール製造工程の流れ、表バイオエタノール製造時における各画分中の放射性セシウム(Cs)濃度と移行割合