プレスリリース
遺伝子組換え農作物の高感度定量分析法を開発

情報公開日:2000年11月28日 (火曜日)

背景

遺伝子組換え農作物(GMO)の分析方法には、GMOが単に混っているかどうかを判定する定性分析法[whatに相当]と、どの位の混入率があるかを測定する定量分析法[howに相当]があります。いずれの方法も測定の対象となる大豆やトウモロコシからDNAを抽出・精製し、PCRと呼ばれる方法にて目的とするDNAを増やした後、測定するのが一般的です。

定量分析では、PCR法で増幅したDNAの量からGMO混入率を計算する関係式をあらかじめ求めておくことが必要であり、そのために純粋な遺伝子組換え農作物由来のDNAが必要となります。ところが、純粋な遺伝子組換え大豆、あるいはトウモロコシを各品種ごとに安定的に手に入れることは非常に困難であり、現在、ごく限られた分析機関でしか遺伝子組換え農作物の定量分析ができない理由もここにあります。

また、遺伝子組換え農作物の中でも組換えトウモロコシは品種が多く、導入されている遺伝子とその数がそれぞれ異なることから、正確な定量分析が不可能とされてきました。そのため多くの分析機関では、複数の組換えトウモロコシに共通の組換え遺伝子を定量測定し、混入率は代表的な品種に換算して求めていました。

成果の内容・特徴

GMOの各品種由来のDNAをつなぎ合わせた標準分子(プラスミド)を新たに作製することに世界で初めて成功しました。この分子は大腸菌内で簡単に増殖することができるため、安定的に供給することが可能であり、キット化等により、多くの分析機関で遺伝子組換え農作物の簡易な分析が可能となります。更に、多くの農作物に共通に含まれるDNAをこの標準分子につなぎ合わせることにより、非常に精度の高い分析が可能(0.1%の混入まで測定可能)となりました。

今回開発した方法により、同一の標準分子を用いて5種類の組換えトウモロコシを個別に定量測定することができ、従来の換算法と比べてより正確に混入率を求めることが可能となりました。

農林水産省食品総合研究所、アサヒビール株式会社(本社 東京、社長福地茂雄)、日本製粉株式会社(本社 東京、社長 澤田浩)は、大豆やトウモロコシなどの遺伝子組換え農作物(GMO)混入率を算定する新たな遺伝子組換え農作物の定量分析法として共同特許出願しました。

この技術は、最先端の技術で遺伝子組換え農作物の検出を研究している農林水産省食品総合研究所の日野明寛(ひの あきひろ)室長を中心に、より高感度な定量分析法の確立を必要としていたアサヒビール(株)、日本製粉(株)が共同で取り組み、あわせて厚生省国立医薬品食品衛生研究所、農林水産省東京農林水産消費技術センターや多くの民間企業の協力により確立しました。

本技術は、遺伝子組換え農産物の表示制度実施に伴う実態調査、非組換え原料の品質評価等の品質管理の向上に役立つ定量分析法であり、有効に活用されることを期待しています。

今後の課題

この方法を用いた分析受託や迅速測定キットの販売なども、将来的に検討してまいります。