ポイント
- 農研機構と日本種苗協会は共同で海外の野菜遺伝資源1)の国内への導入と利用を加速する活動を開始しました。
- 農業生物資源ジーンバンク事業2)等の活動に日本種苗協会傘下の種苗産業のノウハウが加わることで、海外からの野菜遺伝資源の導入が進み、より短期間で利用可能となることが期待できます。
概要
農研機構(理事長:久間和生)と一般社団法人日本種苗協会(会長:金子昌彦、以下「種苗協会」)は、農研機構が進めている農業生物資源ジーンバンク事業において、海外植物遺伝資源の採種と農業特性の評価、そして新規遺伝資源の探索収集を共同で進める共同研究を2021年4月から5年間実施する契約を締結しました。
海外からの野菜遺伝資源導入に関する問題点
優良な新品種の開発には多様な遺伝資源が必要です。しかし、近年、海外遺伝資源を民間ベースで国内へ導入することは難しくなりつつあります。農研機構は農業生物資源ジーンバンク事業や農水省委託プロジェクトによって海外での野菜等の遺伝資源の探索や国内への導入を進めてきました。導入後の遺伝資源を利用できるようにするには、特性の調査や、利用量を確保するための採種が不可欠です。しかし、野菜は作目が多いため農研機構だけではマンパワーや採種・特性評価技術に限界があり、導入後一般に利用されるまでに時間がかかることが問題でした。
共同研究に両者が分担する役割
これまでも、農研機構と種苗協会とは植物遺伝資源について協力してきましたが、今回の共同研究で両者の協力関係を明確にしました。農研機構が農業生物資源ジーンバンク事業等で、海外で収集し国内に導入した野菜遺伝資源について、種苗協会傘下の種苗企業が独自のノウハウによって採種や特性評価を行います。これまで農研機構だけでは導入遺伝資源を利用可能とするまでに5~7年が必要でしたが、今回の共同研究により2~3年で可能となることが期待できます。また、農研機構は海外遺伝資源の探索を計画する際に、種苗協会傘下の種苗企業が求める作目や特性を聞き取り、可能な範囲で共同での海外探索を検討することで、より需要の高い遺伝資源を充実させます(参考図)。
期待される成果と社会への影響
農研機構と種苗協会とが共同して野菜遺伝資源を導入、特性評価を行うことで、日本にないユニークな特性を持った海外遺伝資源が効率的に国内に導入され、短期間で利用できるようになります。多様な遺伝資源を利用することで、優秀な新品種の開発が進み、将来的には、野菜の生産物や種苗の海外への輸出が拡大することが期待されます。
センター長川口 健太郎
日本種苗協会
会長金子昌彦
ユニット長高田明子
日本種苗協会
ジーンバンク特性調査・増殖小委員会委員長近藤友宏
渉外チーム長野口真己
日本種苗協会
専務理事福田豊冶