農研機構
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
国立大学法人筑波大学
国立大学法人東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部
国立研究開発法人理化学研究所
ポイント
農研機構、量子科学技術研究開発機構、筑波大学、東京大学、理化学研究所からなる研究グループは、アズキの近縁種であるヒナアズキが、葉に特殊なデンプンを蓄積し、ナトリウムを吸着させ隔離することで無害化できることを明らかにしました。新たに解明したこの耐塩性機構は、一般的な耐塩性植物が持つ葉へのナトリウム流入抑制とは異なることから、今後の耐塩性作物の開発への適用が期待されます。
概要
多くの植物では、ナトリウムが葉に流入して蓄積すると、光合成を阻害し葉に深刻な障害(塩害)をもたらします。利用可能な淡水資源が世界的に減少しつつある現在、ナトリウム濃度の高い塩水でも栽培可能な、塩害に強い耐塩性作物の開発が求められていますが、そのためには耐塩性機構の解明が不可欠です。
一般的な耐塩性植物は、葉へのナトリウム流入を抑制する機構が発達しています。以前、農研機構と量子科学技術研究開発機構(QST)は、アズキの近縁種の耐塩性植物には、これとは異なる独自の耐塩性機構を獲得した種が複数存在することを明らかにしました。
(2023年3月8日農研機構プレスリリース
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/ngrc/157576.html)
その中でもヒナアズキは、葉にナトリウムを蓄積するユニークな性質を持っており、今回、農研機構、量子科学技術研究開発機構(QST)、筑波大学、東京大学、理化学研究所(理研)からなる本研究グループは、その耐塩性機構について詳細な調査を行いました。
その結果、ヒナアズキの葉では、葉緑体に多くのデンプン顆粒を形成し、そのデンプン顆粒の特殊な能力によって流入したナトリウムを吸着することで、光合成の阻害等のナトリウムの悪影響を抑制することが示唆されました。このように、ヒナアズキは、多くの耐塩性植物が持つ葉へのナトリウム流入抑制とは異なる耐塩性機構を持つことが明らかとなりました。
今後、ヒナアズキの特殊なデンプン顆粒形成に関連する遺伝子の同定を進めます。これによりヒナアズキの特殊な耐塩性機構をその他の耐塩性機構と組み合わせることで、世界的な淡水資源の枯渇問題に対応する、さらに塩害に強い作物の開発への応用が期待されます。
関連情報
予算 : 科学技術振興機構さきがけ「二酸化炭素資源化を目指した植物の物質生産力強化と生産物活用のための基盤技術の創出」JPMJPR11B6
予算 : 日本学術振興機構科学研究費助成事業「Vigna属耐塩性野生種のNa吸収に関するイメージングおよび全遺伝子発現解析」18H02182
予算 : 内閣府ムーンショット型研究開発制度「サイバーフィジカルシステムを利用した作物強靭化による食料リスクゼロの実現」JPJ009237