ポイント
農研機構は、生物多様性1)を保全する農地の管理技術をまとめた事例集を作成しました。また、鳥類などを指標に生物多様性の豊かな水田を判定する新手法を開発し、調査・評価マニュアルとして公開しました。本成果は、農業者や自治体が環境に配慮した農業を実践し、その取組による生物多様性の保全効果を客観的に評価するのに役立ちます。
概要
農業は食料や生活資材を生産するだけでなく、農地やその周辺における生物多様性の保全を含む多面的な機能を有しており、国民全体がその恩恵(生態系サービス2))を知らず知らずに受けています。しかし、農地やその周辺における生物多様性は、使用する農業技術によっては大きく損なわれることもあります。したがって、農業生産と生物多様性の共存共栄を図るためには、生物多様性の保全に有効な農業技術を明らかにするとともに、その効果を科学的に評価する手法を確立する必要があります。
そこで農研機構を中心とする研究グループは、生物多様性を保全する農地(果樹園及び水田)の管理技術として、環境負荷の低い農薬の使用方法や、果樹園での下草管理方法、水田における小水路や畦畔(けいはん)の管理方法を開発しました。また、これらの環境に配慮した取組による生物多様性の保全効果を客観的に評価する方法として、サギ類などを指標に、生物多様性の豊かな水田を判定する新手法を開発しました。この評価法では、指標生物としてサギ類やその餌となる魚類、クモ・昆虫類などを選択し、それらの個体数・種数をもとにスコア化し、総合判定を行います。
本成果は、農業者や自治体が環境に配慮した農業を実践し、その取組による生物多様性の保全効果を客観的に評価するのに役立ちます。また、環境に配慮した農業の生産物であることを科学的に示すことにより、農産物の付加価値の向上、ブランド化に貢献します。
農地の管理技術については事例集を、生物多様性の豊かさを評価する手法については調査・評価マニュアルを公開しました。事例集及びマニュアルは、農研機構のウェブページからダウンロードできます。
- 農業に有用な生物多様性を保全する圃場管理技術事例集
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/pub2016_or_later/laboratory/nifts/080361.html - 鳥類に優しい水田がわかる生物多様性の調査・評価マニュアル
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/pub2016_or_later/laboratory/niaes/manual/080832.html
関連情報
予算:農林水産省委託プロジェクト研究「生物多様性を活用した安定的農業生産技術の開発」