ポイント
大きさの異なる3つの小さな球の温度から、日射などの影響を計算で除去して正確な気温を求める新しい温度計を開発しました。本温度計を用いることで、野外でも日よけや通風装置を使わずに信頼性の高い気温データを取得することができ、データに基づいた農作物の管理などに役立ちます。
概要

通常、野外での正確な気温測定には、日射(太陽放射)など放射の影響を避けるために百葉箱や通風筒(日よけと通気ファンを組み合わせた装置)が用いられます。しかし、農地のスペースあるいは電源の制約からそれらを使用しない場合、放射の影響を適切に除去できず、日中に気温を実際よりも高く測定してしまうという問題がありました。
そこで農研機構では、放射の影響を計算で除去することで正確に気温を求めることができる多球温度計の原理を新しく考案しました。この原理は球体の熱収支理論に基づいており、大きさの異なる複数の小さな球の温度から正確な気温を計算します。野外実験から最適な球の数と大きさの組み合わせを調べ、その結果をもとに、3つの小さな球形センサ(直径0.25mm、1mm、4mm)から構成される三球温度計(写真)を開発しました。
本温度計を用いることで、野外において百葉箱や通風筒などの設置が困難な場合にも、放射の影響を受けない正確な気温データを取得できます。本温度計は、データを活用した農作物の管理に役立つと同時に、通気ファンなどの電源が不要なため、商用電源が確保できない場所での気温測定など、農業以外の分野でも活用が期待されます。
本成果は、2020年10月15日発行の国際科学誌Agricultural and Forest Meteorology第292号に掲載されました。
*三球温度計の実物を、文部科学省研究交流センター1Fエントランスホール(茨城県つくば市)にて展示中です(本日~11月25日まで)。
関連情報
予算:科学研究費「高温環境下における植物群落内の局所的な熱動態の計測手法の開発」、科学研究費「領域気象モデルを活用した農地動態の広域熱環境への影響評価」
特許:特許第6112518号
問い合わせ先
研究推進責任者 :
農研機構農業環境変動研究センター 所長 渡邊 朋也
研究担当者 :
同 気候変動対応研究領域 上級研究員 丸山 篤志
広報担当者 :
同 研究推進室(兼本部広報専門役) 大浦 典子