プレスリリース
日本に新たに侵入した牛のアルボウイルス

情報公開日:2005年9月15日 (木曜日)

動物衛生研究所九州支所は、熱帯・亜熱帯地域に分布し、これまで国内で見られなかった牛のアルボウイルス類のPeaton virus(ピートンウイルス)、 Sathuperi virus(サシュペリウイルス)、D'Aguilar virus(ディアギュラウイルス)およびShamonda virus(シャモンダウイルス)が九州以北の地域で流行していることをはじめて確認しました。新しく確認されたアルボウイルスを監視対象に加えることにより、アルボウイルスによる異常産等の家畜感染症の原因解明や流行予察の向上が期待できます。

日本に侵入し、畜産業に多大な損害を与え続けるアルボウイルス

アルボウイルス(節足動物媒介性ウイルス)は、蚊、ヌカカやダニなど吸血性の節足動物によって媒介されるウイルスの総称で、500種以上の異なるウイルスが含まれており、日本脳炎ウイルスやウエストナイルウイルスなどヒトや家畜の重要な病気の原因となるウイルスが知られています。
牛のアルボウイルスは、わが国の主要な肉用牛の生産地域である九州を中心に、毎年のように流行が確認されています。これらの中には、流産・早産・死産・先天異常などのいわゆる流行性異常産(アカバネ病、チュウザン病、アイノウイルス感染症)や、流行性の熱病を引き起こすものが含まれており、侵入ウイルスのサーベイランスを開始した1980年以降も約19000頭の牛が被害にあい、日本の畜産に多大な損失を与えています。

侵入ウイルスのサーベイランスと未知ウイルスの分離

動物衛生研究所九州支所は、20年以上にわたって九州・沖縄各県の家畜保健衛生所と共同し、媒介節足動物の活動が盛んな夏から秋にかけて牛の血液を採集し、抗体検査とウイルス分離を行い、牛のアルボウイルスの被害を防ぐための流行状況の調査を行っています。また、体長1~3mm程度のハエ(双翅)目の吸血昆虫であるヌカカの活動調査やヌカカからのウイルス分離も併せて実施しています。更に、分離したウイルスの同定と性状の解析を行い、流行株に対する既存ワクチンの有効性を確認するとともに、新しいウイルスについては病気との関係を調べて流行予測に役立てています。

最近日本にはじめて侵入したアルボウイルス数種を分離・同定した

最近、分離・同定したアルボウイルスはPeaton virus(ピートンウイルス、1999年分離、2001年同定)、Sathuperi virus(サシュペリウイルス、1999年分離、2003年同定)、D'Aguilar virus(ディアギュラウイルス、2001年分離、2003年同定)およびShamonda virus(シャモンダウイルス、2002年分離、2004年同定)です。こうしたウイルスは、温暖化などの気象要因により、媒介昆虫の活動が活発化し、媒介昆虫であるヌカカなどによって、熱帯・亜熱帯地域から運ばれてくると考えられています。九州支所は新興・再興ウイルスの侵入および蔓延の危険性に対処すべく、その侵入の玄関口である九州・沖縄地域での監視体制を強化していきます。