ポイント
農研機構は、現在東欧やアジアで流行しているASF(アフリカ豚熱)1)が、ニホンイノシシに感染するか否か、また感染した場合の症状や病変について検証しました。ニホンイノシシ4頭の筋肉内にASFウイルスを接種する試験を行ったところ、接種後5日目に1頭が、6日目には2頭が死亡し、残る1頭も瀕死状態に至りました。解剖検査では、全頭で豚と同様の急性型の病変が認められました。これらの結果から、ASFがニホンイノシシにも感染し、豚と同様の症状と病変を引き起こすことが確認されました。
概要
流行株であるASFウイルス Armenia07株2)を、ニホンイノシシ4頭の後肢へ筋肉内接種しました。ASFウイルスを接種したニホンイノシシは接種後4日目から全頭が元気消失し、食欲も低下しました。接種後5日目には1頭が、また6日目には2頭が死亡し、残る1頭も瀕死の状態となったため接種後6日目に安楽殺して、全頭を解剖検査に供しました。検査ではASFウイルスを接種したニホンイノシシの脾臓は全て黒色調を呈し、著しく腫大していました。また胃の周囲のリンパ節をはじめとする腹腔内のリンパ節は暗赤色調を呈し、血液凝固が不全になるなど、いずれのニホンイノシシでもASFに感染した豚と同様、急性型のASFに特徴的な所見が認められました。
本試験の結果から、現在広く流行しているASFウイルスはニホンイノシシにも感染し、豚と類似した症状を引き起こすことが確認されました。国内に侵入した場合は、野生イノシシによるASFの拡散に対して警戒が必要です。本試験で得られた知見は、農林水産省が主導する本病の防疫対策に活用されます。
関連情報
予算:農林水産省委託プロジェクト「家畜の伝染病の国内侵入と野生動物由来リスクの管理技術の開発」