ポイント
農研機構動物衛生研究部門は、香川県の養鶏場での今季初発の高病原性鳥インフルエンザ1)発生事例から分離されたH5N8亜型インフルエンザウイルスの病原性解析を行いました。鶏への静脈内接種試験および経鼻接種試験の結果、本ウイルスは、鶏に対して高い致死性を示すものの、死亡するまでの期間が長い傾向が認められました。本ウイルスによる高病原性鳥インフルエンザ発生の早期発見には、農場での鶏の死亡数の増加に十分な注意を払うことが必要です。
概要
本ウイルス株が自然感染経路である経鼻感染で鶏を致死させるウイルス量を推定するために、102、104、105および106 50%鶏卵感染ウイルス量(EID50)4)のウイルス量を鶏5羽ずつに経鼻接種しました。その結果、106 EID50試験群では6日以内に鶏が全羽死亡、105 EID50試験群では7日以内に5羽中4羽が死亡しましたが、102および104 EID50試験群は14日の観察期間中全羽が生存しました。また、死亡した鶏に沈うつ以外の顕著な症状は認められませんでした。本ウイルス株と2004年および2018年に国内で分離されたH5亜型HPAIV(山口2004株および香川2018株)を比較すると、本ウイルス株では鶏がウイルスに感染してから死亡するまでの期間がそれらのウイルス株に比べて有意に長いことを明らかにしました。
農研機構動物衛生研究部門では、今後本ウイルス感染鶏からのウイルス排泄動態などを精査して行く予定です。