ポイント
農研機構動物衛生研究部門は、2020年11月5日から2021年2月16日までに国内の
概要
農研機構動物衛生研究部門では、家禽及び野鳥から得られたH5N8亜型HPAIVの関連性やウイルスの侵入・拡散経路等を推定することを目的に、全国の家禽での49発生事例(2020年11月5日から2021年2月11日)と関東甲信越・北陸地方の野鳥由来検体8例(2020年11月5日から2021年2月16日)から得られたウイルス57株の全ゲノムの解読を行いました。
A型インフルエンザウイルスは8本の遺伝子分節(PB2、PB1、PA、HA、NP、NA、MP及びNS遺伝子分節)4)から構成されているため、今回解読したウイルスの分節ごとに系統樹解析5)を行ったところ、ウイルスの亜型を決定するHA及びNA遺伝子分節では、2019-2020年にヨーロッパで流行したH5N8亜型HPAIV系統(欧州19-20冬系統)と2020-2021年にロシア・ヨーロッパで報告されているH5N8亜型HPAIV系統(欧州20秋系統)の2つの系統に由来するウイルスが存在していました。そのうち、欧州19-20冬系統では、HA及びNA以外のPB2、PB1、PA及びNP遺伝子分節が野鳥由来の鳥インフルエンザウイルスに由来している4種類が見出され、各分節の組合せによって合計5種類の異なる組合せ(遺伝子型)のウイルスが国内に侵入していることが明らかになりました。5種類の遺伝子型のウイルスの推定アミノ酸配列には、抗ウイルス剤であるノイラミニダーゼ阻害剤及びウイルス RNA ポリメラーゼ阻害薬に対する耐性変異は見られませんでした。また、哺乳類に対する感染性を増加させる様な既知のアミノ酸変異も認められていません。
当機構では、今後5種類の遺伝子型のウイルスについて、感染実験によって家禽に対する致死性及び体内でのウイルス増殖性などを精査していく予定です。