プレスリリース
早生で製粉歩留と製めん性の優れた小麦新品種「あおばの恋」を育成

情報公開日:2008年7月31日 (木曜日)

農研機構作物研究所では、日本めん(うどん)用の小麦新品種「あおばの恋」を育成しました。一般的にめん用小麦は軟質ですが、「あおばの恋」は硬質である ため、製粉歩留が高いという特徴があります。本品種で作っためんは、色がやや黄色みのある白色で好ましく、外観はつやがあり、食感は適度なもちもち感があ ります。さらに、縞萎縮病抵抗性を備えています。

この「あおばの恋」の栽培適地は東北南部及び関東以西の平坦地であり、宮城県において主力品種のシラネコムギより早生で晩播大豆と組合せた作付けに有利であることから、普及が有望視されています。


詳細情報

《背景とねらい》

国産小麦の主な用途はめん用(うどん用)ですが、実需者からは加工適性(製粉性、めんの色及び食感)のより優れた品種が求められ、生産者からは栽培性のよ り優れた品種を要望する声が多くあがっています。宮城県では、めん用の小麦品種として主に「シラネコムギ」が栽培されていますが、実需者からは、めんの食 感があまり良くないこと、生産者からは成熟期が遅いこと、縞萎縮病に罹病性であることが、指摘されています。

そこで、東北南部の気候に適した、加工適性が優れ、早生で縞萎縮病抵抗性をもつめん用小麦品種を育成しました。

《成果の内容・特徴》

  • 「あおばの恋」(図1)は、育成地(茨城県つくば市)においては「農林61号」より4日程度、宮城県においては「シラネコムギ」より4日程度早生です。穂発芽耐性が優れています。また、硬質小麦のため、高い製粉歩留を示します(表1)。
  • 縞萎縮病常発地帯でも栽培できます(表2)。
  • 「シラネコムギ」より、めんの色と外観が優り、やや低アミロース含量のため、食感(かたさ・もちもち感・滑らかさ)が優れています。 (表3)。 
  • 栽培適地は、東北南部及び関東以西の平坦地です。

《品種名の由来》

「あおば」は収穫期の夏をイメージし、「恋」は消費者に「好かれる」ことを願ったものです。

図1 「あおばの恋」の株標本、左:あおばの恋、右:農林61号

表1.「あおばの恋」の特性

表2.「あおばの恋」の縞萎縮病常発地帯(宮城県登米市))での生育特性

表3.「あおばの恋」のめんの特徴

《解説》

硬・軟質性と製粉歩留
小麦には粒の硬いタイプ(硬質小麦)と柔らかいタイプ(軟質小麦)があります。小麦を製粉する原理は、ロールで粒を砕き、篩を通して粉を集めるというもので、原料の小麦粒の重さに対し、どれだけの重さの粉が得られたか、その割合が製粉歩留です。粉が細かすぎるとダマになって篩を通りにくくなり製粉歩留が低下します。硬質小麦は軟質小麦より粗い粉になるので、製粉歩留が高くなります。
縞萎縮病
縞萎縮病は土壌伝染性のウイルス病です。この病気にかかると葉に細長いかすり状の黄色い斑点ができ、生育不良となって草丈が小さくなるのでこの名前があります。縞萎縮病が発生する圃場では抵抗性品種を栽培することが一番の対処法です。
アミロース含量
小麦粉の主成分はデンプンです。デンプンは粘りの少ないアミロースと粘りの多いアミロペクチンが混じってできています。通常の小麦にはアミロースを作る遺伝子が3つありますが、「あおばの恋」では2つしか働いていないのでやや低アミロース含量になっています。このため、めんにもちもち感が出て、食感の評価が高くなっています。