プレスリリース
小麦新品種 「うららもち」

- 収量性および製粉性に優れたもち性小麦新品種 -

情報公開日:2005年12月21日 (水曜日)

要約

独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 作物研究所は、収量性や製粉性が改善された温暖地向けのもち性小麦新品種「うららもち」を開発しました。もち性小麦の特性を生かした独特の食感を持つうどんやパン、和菓子など地域特産的な用途向けに普及が見込まれます。

背景・ねらい

平成7年に世界で初めて開発された「あけぼのもち」などのもち性小麦品種は、新規用途向けの食品の素材として、様々な試作・検討が行われてきました。しかし、これまで育成されたもち性品種は、栽培性や製粉性で改良すべき点があり、広く栽培されるには至りませんでした。しかし、三重県などでは、もち性小麦の新規性を利用した商品化への取り組みが続けられてきました。これに応えるため、栽培性や製粉性など従来の欠点を改良したもち性小麦品種の開発を行いました。

「うららもち」の来歴

「うららもち」は、もち性小麦の栽培特性および品質特性の改良を育種目標として、早生多収で製粉性に優れた「バンドウワセ」を母、「谷系H1881(のちの「あけぼのもち」)」を父とし、半数体育種法によって育成された品種です。平成6年に交配を行い、平成11年から「関東糯124号」の系統名で奨励品種決定調査に供試してきました。今回、その優秀性が認められ、農林水産省に小麦農林糯163号として登録され、「うららもち」と命名されました。

「うららもち」の主要特性

  • アミロース含量は極少で、もち性小麦特有の生地物性を示します。
  • 関東以西の普及品種「農林61号」と比べて、成熟期が1日程度早い中生種です。
  • 「農林61号」と比べて稈長はやや短く、「あけぼのもち」より収量性が優れます。
  • 製粉歩留は「あけぼのもち」より優れます。
  • 縞萎縮病と赤さび病に対して抵抗性です。

栽培適地及び普及見込み

栽培適地
関東以西の温暖地の平坦地。

普及見込み先
三重県などで、地域特産的な用途向けに普及が見込まれる。


詳細情報

用語説明

もち性小麦
小麦はゲノム(染色体の組)が3つある六倍体の作物で、これらのゲノムが全てもち性遺伝子を持たないともち性にならないため、従来もち性小麦は知られていなかった。その後、遺伝的な研究が進み、1995年に世界で初めて「あけぼのもち」をはじめとしたもち性品種がわが国で育成された。米などと同様に、もち性であるともちもちした独特の食感がある。

半数体育種
品種改良では、通常品種としての特徴を固定させるのに10年近い年月が必要である。半数体育種では、異なる作物の花粉を交配することなどで、染色体が通常の半分しかない半数体を作出し、人工的にそれを倍加することで、短期間に遺伝的に固定した系統を得る方法である。

系譜図
図1 系譜図

試験データ
表1 生育特性(育成地、平成9~13年度平均、ドリル播栽培(畑))
表1 生育特性(育成地、平成9~13年度平均、ドリル播栽培(畑))

表2 品質特性(育成地、平9~13年度平均、ドリル播栽培(畑))
表2 品質特性(育成地、平9~13年度平均、ドリル播栽培(畑))

草姿
図2 草姿
(左:「うららもち」、中:「農林61号」、右:「あけぼのもち」

穂 及び 子実
図3 穂

図4 子実
(左:「うららもち」、中:「農林61号」、右:「あけぼのもち」