要約
独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 作物研究所は、収量性や製粉性が改善された温暖地向けのもち性小麦新品種「うららもち」を開発しました。もち性小麦の特性を生かした独特の食感を持つうどんやパン、和菓子など地域特産的な用途向けに普及が見込まれます。
背景・ねらい
平成7年に世界で初めて開発された「あけぼのもち」などのもち性小麦品種は、新規用途向けの食品の素材として、様々な試作・検討が行われてきました。しかし、これまで育成されたもち性品種は、栽培性や製粉性で改良すべき点があり、広く栽培されるには至りませんでした。しかし、三重県などでは、もち性小麦の新規性を利用した商品化への取り組みが続けられてきました。これに応えるため、栽培性や製粉性など従来の欠点を改良したもち性小麦品種の開発を行いました。
「うららもち」の来歴
「うららもち」は、もち性小麦の栽培特性および品質特性の改良を育種目標として、早生多収で製粉性に優れた「バンドウワセ」を母、「谷系H1881(のちの「あけぼのもち」)」を父とし、半数体育種法によって育成された品種です。平成6年に交配を行い、平成11年から「関東糯124号」の系統名で奨励品種決定調査に供試してきました。今回、その優秀性が認められ、農林水産省に小麦農林糯163号として登録され、「うららもち」と命名されました。
「うららもち」の主要特性
- アミロース含量は極少で、もち性小麦特有の生地物性を示します。
- 関東以西の普及品種「農林61号」と比べて、成熟期が1日程度早い中生種です。
- 「農林61号」と比べて稈長はやや短く、「あけぼのもち」より収量性が優れます。
- 製粉歩留は「あけぼのもち」より優れます。
- 縞萎縮病と赤さび病に対して抵抗性です。
栽培適地及び普及見込み
栽培適地
関東以西の温暖地の平坦地。
普及見込み先
三重県などで、地域特産的な用途向けに普及が見込まれる。