プレスリリース
水稲新品種 「さとじまん」

- 中生熟期で、早植・晩植とも「コシヒカリ」並に食味が良い水稲新品種 -

情報公開日:2005年9月15日 (木曜日)

要約

農業・生物系特定産業技術研究機構 作物研究所は、暖地で中生熟期の極良食味水稲として、水稲新品種「さとじまん」を育成しました。この品種は農林水産省において「さとじまん」と命名され、水稲農林406号に登録されました。「さとじまん」は平成17年度より神奈川県で奨励品種に採用されました。

背景・ねらい

温暖地においては水稲の収穫作業の競合を避けるため、「コシヒカリ」と刈り取り時期が異なる極良食味品種や麦跡の晩植栽培に適した市場性の高い品種が必要とされています。作物研究所ではこうした要望に応える水稲品種の開発を進めてきました。

「さとじまん」の来歴

「さとじまん」は強稈で縞葉枯病に抵抗性の良食味系統を育成することを目標として、「関東175号」を母、「越南154号」を父とする後代より育成された品種です。平成6年に人工交配を行い、平成13年からは「関東209号」の系統名で奨励品種決定調査に供試してきました。平成17年度より神奈川県で奨励品種に採用されました。

「さとじまん」の主要特性

  • 温暖地での熟期は中生の中である。
  • 稲麦二毛作地帯で問題となる縞葉枯病に抵抗性である。
  • 早植・晩植とも「コシヒカリ」並に食味が良い。
  • 早植・晩植とも収量性が高い。
  • 耐倒伏性が強い。

栽培適地及び普及見込み

栽培適地
関東以西の平坦部

奨励品種採用県
神奈川県(普及見込み面積 1,000ha)


詳細情報

1.育成機関

独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構
作物研究所 稲研究部稲育種研究室・多用途稲育種研究室

2.来歴

育成期間
平成6年~平成16年 (11年間)

交配親
関東175号×越南154号

旧系統名
関東209号

3.主要特性

・中生の良食味品種である。
・麦跡晩植栽培で問題となる縞葉枯病に抵抗性である。
・短稈で耐倒伏性が強い。
・収量性が高い。

4.特性概要

(1)生育特性

  • 出穂期・成熟期は「月の光」並の中生の中である。
  • 稈長はやや短稈で穂数はやや少なく草型は偏穂重型である。
  • 耐倒伏性は「月の光」並の強である。
  • ・玄米千粒重は「月の光」より重く、収量性はやや高い。
  • ・葉いもち抵抗性はやや強、穂いもち抵抗性はやや弱である。
  • ・縞葉枯病にはStvb-i を持ち抵抗性である。

(2)品質特性

  • 玄米の外観品質は「月の光」よりやや劣り中中である。
  • 食味は「月の光」より優り、「コシヒカリ」並の上中である。
  • 白米中のアミロース含量は「コシヒカリ」並かやや高く、タンパク質含有率は「コシヒカリ」並かやや低い。

5.栽培適地及び普及見込み先

適地
関東以西の平坦部

普及見込み先
神奈川県で奨励品種に採用
(普及見込み面積 1,000ha)

図1 系統図

表1 育成特性

表2 品質特性

図2 草姿

図3 苗および玄米

図4 草姿