プレスリリース
極多収の水稲新品種「とよめき」

- 極多収で業務・加工用の早生品種 -

情報公開日:2016年6月 8日 (水曜日)

ポイント

  • 800kg/10a以上の極めて多収で、業務・加工用に適した水稲新品種「とよめき」を育成しました。
  • 東北南部以西において、冷凍米飯等の加工用米としての利用が期待されます。

概要    

  • 農研機構次世代作物開発研究センターは、粳(うるち)で極めて多収の業務・加工用水稲新品種「とよめき」を育成しました。
  • 「とよめき」の玄米収量は、施肥量が標準の栽培で738kg/10a(「コシヒカリ」の598kg/10aに比べて23℅多い)、 施肥量が多い栽培で814kg/10a(「コシヒカリ」の510kg/10aに比べて60℅多い)であることから、高収量が期待されます。
  • 「とよめき」は、栽培適地である東北南部以西の地域において、炊飯米の粘りが強すぎない特徴を活かした冷凍米飯等の加工用としての利用が期待されます。

予算:農林水産省委託プロジェクト「広域・大規模生産に対応する業務・加工用作物品種の開発」

品種登録出願番号:第30258号(平成27年6月11日出願、10月30日出願公表)

新品種育成の背景と経緯

外食・中食用の米の需要が安定している中で、外食・中食産業での利用に適した安価な業務・加工用米が求められています。これらに対応するため、極多収で耐倒伏性に優れ、業務・加工用米として利用可能な食味と品質を有する水稲品種の育成に取り組みました。

「とよめき」の特徴

  • 極多収の「やまだわら」と良食味品種「イクヒカリ」の交雑後代より育成した品種です。
  • 育成地(茨城県つくばみらい市)における出穂期は「コシヒカリ」より3日早く、成熟期は「コシヒカリ」より6日遅くなります(表1)。
  • 穂長が「コシヒカリ」より長く、穂数が「コシヒカリ」より少ない、「穂重型」の品種です(表1写真1写真2)。また、稈長は「コシヒカリ」より短く中稈です。
  • 耐倒伏性はやや強く、多肥栽培でさらに多収となります(表2)。育成地での玄米収量は、「コシヒカリ」に比べて早植・標肥で23℅、早植・多肥で60℅多収です。多肥試験では、4カ年平均で814 kg/10aの高収量が得られています。また、関東・北陸以西地域の奨励品種決定調査試験でも高収量が得られています(図1)。
  • 極多収であることに加え、玄米の外観品質と食味が中程度で、炊飯米が粘りすぎないため、加工用米としての利用が期待されます(表3図2写真3)。
  • 栽培適地は東北南部以西の地域です。

栽培上の留意点

  • いもち病の真性抵抗性1)遺伝子Pibを持ちますが、葉いもち圃場抵抗性2)は"弱"のため、侵害菌の発生に注意するとともに、発生が見られた時は防除を徹底して下さい(表4)。
  • 縞葉枯病に弱いため、常発地での栽培は避ける必要があります(表4)。
  • トリケトン系4-HPPD阻害型除草成分(ベンゾビシクロン、テフリルトリオン、メソトリオン)に感受性が高いため、それらを含む除草剤は使用しないでください。

品種の名前の由来

多収の評判が響き渡ることをイメージして命名しました。

今後の予定・期待

  • 数年後には関東以西を中心に、約200 haでの栽培が見込まれています。
  • 平成27年度より茨城県稲敷市で冷凍米飯用の加工米として栽培されています。

用語の解説

1)真性抵抗性:程度の強い抵抗性で、特定の種類のいもち病菌には感染しない。長年栽培することにより、感染する病菌が出現し、抵抗性が持続しない場合がある。

2)圃場抵抗性:比較的多くの種類のいもち病菌に対して効果がある抵抗性。抵抗性の程度は弱く多少感染するが、罹病しても著しい減収は免れる。長年の栽培でも抵抗性の持続が期待できる。

表1.生育特性

表2.収量特性

表3.食味特性

表4.耐性・耐病性

図1.奨励品種決定調査試験における「とよめき」と対照(比較)品種との玄米収量(kg/10a)の比較

図2.とよめきの冷凍炒飯に関する実需者(A社)の官能評価

写真1.「とよめき」の圃場での草姿

写真2.「とよめき」の稲株

写真3.「とよめき」の籾および玄米