プレスリリース
渋皮が簡単にむける早生のニホングリ新品種「ぽろすけ」

- 「ぽろたん」の受粉樹にも最適 -

情報公開日:2017年3月10日 (金曜日)

ポイント

  • 「ぽろたん」と同じように渋皮がむきやすく1)、「ぽろたん」より1週間程度早く収穫できるニホングリ「ぽろすけ」を育成しました。渋皮がむきやすいクリの収穫期間を拡大できます。
  • 「ぽろすけ」と「ぽろたん」は相互に受粉樹2)として利用できます。この2品種を植栽することで、渋皮がむきやすいクリを安定生産できます。

概要

  1. 渋皮がむきやすいクリ「ぽろたん」は、農研機構が育成して平成19年に品種登録されたクリ品種で、その後普及が進んでいます。今回、農研機構は、「ぽろたん」と同じように渋皮がむきやすく、「ぽろたん」より1週間程度早く収穫できるニホングリ新品種「ぽろすけ」を育成しました。「ぽろすけ」は全国のクリ産地で栽培可能で、「ぽろたん」と併せて栽培することにより、渋皮がむきやすいクリの収穫期間を拡大できます。
  2. ぽろたん、ぽろすけ、丹沢の比較写真
  3. クリは同じ品種の花粉では実がつきにくい性質(自家不和合性3))をもつため、実を十分確保するためには、花粉用に別の品種(受粉樹)を混ぜて植える必要があります。「ぽろすけ」と「ぽろたん」は相互に受粉樹として利用できます。この2品種を植栽することで、渋皮がむきやすいクリを安定して生産できます。
  4. 「ぽろすけ」の苗木は平成29年秋季より販売される見込みです。

関連情報

予算:運営費交付金
品種登録出願番号:第31235号

背景と経緯

平成19年に品種登録されたニホングリ「ぽろたん」は、渋皮が簡単にむけるという画期的な特長から、全国で普及が進んでいます(平成25年時に172haで、全国のクリ栽培面積の1%)。しかしながら、この特長を持つ品種は「ぽろたん」1品種のみであるため、渋皮がむきやすいクリを供給できる期間が、「ぽろたん」の収穫期間である9月上旬~中旬の2週間程度に限られ、渋皮がむきやすいクリの需要拡大を図る上で大きな障壁となっていました。

また、クリは同じ品種の花粉では実がつきにくい性質(自家不和合性)をもつため、実を十分確保するためには、花粉用に別の品種(受粉樹)を混ぜて植える必要があります。

これらの問題を解決するため、農研機構は「ぽろたん」とは収穫期が異なり、かつ開花期が「ぽろたん」に近いため「ぽろたん」の受粉樹として利用可能な、渋皮がむきやすいクリ品種を育成しました。

新品種「ぽろすけ」の特徴

特徴

  1. 渋皮のむきやすさは「ぽろたん」と同程度で、鬼皮の上から果肉に達する程度の傷を入れて加熱することで渋皮を簡単にむくことができます(写真1)。
  2. 収穫期は「ぽろたん」よりも1週間程度早い8月下旬~9月上旬で、早生クリの代表的品種「丹沢4)」と同時期です(写真2表1)。
  3. 「ぽろすけ」と「ぽろたん」とを相互に受粉したそれぞれの結実率は、「ぽろたん」と従来の受粉樹との結実率と同程度です(表2)。このため、「ぽろすけ」と「ぽろたん」のみを植栽した園地では、収穫した果実に渋皮がむきにくいクリが混入する心配がありません。

その他基本情報・問題点

  1. 全国のクリ産地で栽培可能です。
  2. 樹勢、収量及び双子果5)、腐敗果、虫害果の発生率は「丹沢」と同程度です。裂果は「丹沢」より若干少ない程度発生します(表1)。
  3. 果実は「ぽろたん」より小さく、1果重は21g程度です。「ぽろたん」、「丹沢」に比べて、果肉の色は黄色味がやや薄く、甘味、香気も若干少な目です。肉質6))はやや粉質で、「丹沢」と同程度にホクホクします(表3)。

品種の名前の由来

「ぽろすけ」という名前は、渋皮が'ぽろっ'とむけることと、「ぽろたん」を補完し(助け)、渋皮がむきやすいクリの供給期間拡大に貢献する品種であることに由来します。

今後の予定・期待

「ぽろすけ」は、渋皮がむきやすいクリの収穫期間を拡大するための品種として、また「ぽろたん」と混植することで、渋皮がむきやすいクリの安定的な収穫を可能とする品種として、普及が見込まれます。

苗木の販売予定時期

平成28年9月29日に品種登録出願公表されました。苗木は平成29年秋季より販売される見込みです。

用語の解説

1)渋皮がむきやすい(という性質)
焼き栗など加熱処理を行うことで渋皮がむきやすくなる遺伝的特性のことです。「渋皮」とは、クリ果実の外皮(鬼皮)と果肉の間にある薄皮のことで、チュウゴクグリなどと異なり、一般的なニホングリは、焼き栗などにしても渋皮がむきにくい性質を持っています。
「ぽろたん」は、渋皮がむきやすい特性を持つ、世界初のニホングリ品種です。

2)受粉樹
クリは同じ品種の花粉では受粉しない性質があるため、花粉用として近くに異なる品種を植える必要があります。これを受粉樹と呼びます。

3)自家不和合性
自分自身(同一品種)の花粉では受精・結実しない性質のことです。多様性に富んだ子孫を残すために必要な性質と考えられています。

4)丹沢
クリの主要品種の一つで、全国のクリ栽培面積の約16%を占めます。育成地(茨城県つくば市)では8月下旬~9月上旬に収穫され、栽培性、果実品質ともに優良ですが、渋皮がむきやすい品種ではありません。

5)双子果
渋皮に包まれた子葉(果肉)が通常とは異なり2つ入った果実のことです。剥皮後の果肉が小さいため、加工には適しません。

6)肉質
クリの肉質は、粉質、粘質及びその中間の3タイプに分けられます。粉質タイプのクリは、蒸しグリにするとホクホクとした食感となるため、粘質タイプよりも品質が良いとされています。

 

「ぽろすけ」の渋皮のむけやすさ

「ぽろすけ」の結実状況

「ぽろすけ」の樹体特性

 

「ぽろたん」と「ぽろすけ」の交雑和合成

「ぽろすけ」の果実特性