プレスリリース
(研究成果) 酸味の少ないニホンスモモ新品種「ハニービート」

- 既存の良食味品種よりも早い時期に収穫できる品種 -

情報公開日:2018年1月25日 (木曜日)

ポイント

農研機構は、酸味の少ない既存品種よりも早い時期に収穫できる酸味の少ないニホンスモモ新品種「ハニービート」を育成しました。苗木は平成30年秋から販売される予定です。

概要

「ハニービート」の結実状況

我が国では現在、酸味の少ないニホンスモモ品種が好まれ栽培が増加しています。しかし、関東地方における酸味の少ない品種の収穫期は、7月下旬以降に限られていました。
そこで農研機構では、既存の酸味が少ないニホンスモモ品種よりも早く、関東地方で7月中旬頃に収穫できる良食味の新品種「ハニービート」を育成しました。
「ハニービート」は中生の主力品種である「ソルダム」1)や酸味の少ない品種である「サマーエンジェル」2)より約10日早く収穫可能です。このため従来よりも早い時期から、高品質ニホンスモモが流通可能となります。果実の大きさは、「ソルダム」と同等で、甘味が多く酸味が少なく食味良好です。
「ハニービート」の苗木は平成30年秋より販売される予定です。

関連情報

予算:運営費交付金 (平成13~28年度)
品種登録出願:第32148号

新品種育成の背景と経緯

ニホンスモモは「大石早生すもも」3)と「ソルダム」が二大品種であり、これらで全栽培面積の約半分を占めています。しかし、両品種とも酸味が強く、甘味をより好む現在の消費者嗜好には合わないため、生産は大きく減少しています。代わりに、酸味の少ない「太陽」4)「貴陽」5)、「サマーエンジェル」などの品種が増えていますが、いずれも中生以降の品種です。ニホンスモモの消費拡大を図るためには、これらよりも早い時期に収穫できる酸味の少ない品種が必要です。
そこで農研機構では、酸味が少ない既存品種よりも早く収穫できる良食味の新品種「ハニービート」を育成しました。

新品種「ハニービート」の特徴

  • 果樹茶業研究部門の選抜系統であるPP-26-6(「ソルダム」×「オザークプレミア」)と「太陽」を交雑させて「ハニービート」を育成しました(写真1)。
  • 「ハニービート」の成熟期は育成地(茨城県つくば市)では7月中旬頃で、「サマーエンジェル」及び「ソルダム」より約10日早く収穫できます(表1図1)。
  • 「ハニービート」の果実の大きさは120g程度で「ソルダム」と同程度です。糖度は15%程度と「ソルダム」より高く、酸度はpH4.4程度と「ソルダム」及び「サマーエンジェル」より少なく食味良好です(表2)。
  • 「ハニービート」の果皮は紅紫色で、果肉は黄色です(写真2)。
  • 「ハニービート」は他の主要品種に比べて黒斑病6)の発生は少ない傾向にあります。

栽培上の留意点

  • 果梗7)部を中心に輪紋8)が発生しやすいため、成熟期に降雨が多いと裂果の発生が多くなる可能性があります。
  • 自家不和合性9)のため受粉樹が必要です。「貴陽」及び「小松すもも」10)を除く我が国の主要品種は受粉樹として使えます。

品種の名前の由来

酸味が少なく甘いことから「ハニー」、黒斑病に強いことから「ビート(beat=撃退する)」、あわせて「ハニービート」と命名しました。

今後の予定・期待

  • 既存の酸味の少ない品種のいずれよりも早く収穫できることから酸味の少ない果実の流通期間を拡大する品種として普及が期待されます。特に早生から中生の品種の栽培比率の高い西南暖地での普及が期待されます。
    「ハニービート」の苗木は平成30年秋より販売される予定です。

利用許諾契約に関するお問い合わせ先

農研機構本部 連携広報部 知的財産課 種苗チーム
研究・品種についてのお問い合わせ(メールフォーム)

用語の解説

1)「ソルダム」我が国の栽培面積2位のニホンスモモ品種で20%弱を占めています。茨城県つくば市では7月下旬頃に収穫できます。果実はやや酸味があります。

2)「サマーエンジェル」我が国の栽培面積8位のニホンスモモ品種で3%程度を占めています。「ソルダム」とほぼ同時期に収穫できる、酸味の少ない品種です。

3)「大石早生すもも」我が国で最も栽培されているニホンスモモ品種で30%弱を占めています。茨城県つくば市では6月中下旬頃に収穫できます。果実は酸味があります。

4)「太陽」我が国の栽培面積3位のニホンスモモ品種で10%程度を占めています。茨城県つくば市では8月中旬頃に収穫できる、酸味の少ない品種です。

5)「貴陽」我が国の栽培面積4位のニホンスモモ品種で5%程度を占めています。「ソルダム」より3日程度遅く収穫できる、酸味の少ない品種です。

6)黒斑病細菌が原因で発生する病害。多雨または強風条件で発生が多くなります。品種による発生の多少もあり、主要品種では「大石早生すもも」、「サンタローザ」、「秋姫」などで発生が多くみられます。

7)果梗果実の枝に付着していた部位。ニホンスモモの場合、果柄(軸)が付いているところ。

8)輪紋ニホンスモモの果梗部の果皮に生じる同心円状の模様。「太陽」、「貴陽」等の品種で発生しやすい。
「ハニービート」の果実に生じた輪紋

9)自家不和合性自分の花粉では結実しない性質で、結実させるためには和合性のある他品種の受粉樹が必要。

10)「小松すもも」DNAマーカーによる親子鑑定の結果、「貴陽」の花粉親と推定されたニホンスモモ品種。栽培は少なく、平成26年産特産果樹生産動態等調査の掲載は無し。

参考図

表1「ハニービート」の樹の特性

表2「ハニービート」の果実の特性

写真1「ハニービート」の結実状況 写真2「ハニービート」の果実

図1ニホンスモモ品種の茨城県つくば市における収穫期

お問い合わせ

研究推進責任者:農研機構果樹茶業研究部門 研究部門長 樫村芳記
研究担当者:同 品種育成研究領域 核果類育種ユニット長 八重垣英明
広報担当者:同 企画管理部企画連携室果樹連携調整役 和田雅人
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