プレスリリース
(研究成果) 大果で日持ち良好な甘ガキ新品種「つきまる」

- フードロス削減と輸出拡大に期待 -

情報公開日:2026年11月 6日 (金曜日)

ポイント

農研機構は、10月下旬に収穫可能な、やや早生の甘ガキ新品種「つきまる」を育成し、品種登録しました。果実は400g以上と大きく、果肉は緻密でなめらかな食感があり、多汁で食味は良好です。果頂裂果1)の発生が少なく、常温で1か月以上日持ち2)します。良食味によるカキの消費拡大に加え、日持ちの良さを生かした販売期間の確保、出荷調整の自由度向上、流通・消費段階でのフードロス削減、輸出向けの利用が期待されます。

概要

写真1 「つきまる」の果実

現在国内で広く栽培されている甘ガキは、「富有」や「次郎」とその枝変わり品種3)など、収穫期が11月の中晩生品種に偏っています。一方、早生の甘ガキには大果で品質良好な品種が少ないことから、大果で、早い時期から出荷でき、食味と日持ちに優れる品種の開発が求められていました。

そこで農研機構は、中生で大果の渋ガキ「太月」に、早生で高糖度の甘ガキ「甘秋」を交配した、甘ガキの新品種「つきまる」を育成しました。「つきまる」は、育成地(広島県東広島市)では10月下旬に収穫でき、「松本早生富有」より約1週間、「富有」より約20日収穫期が早い品種です。果実は円形で大きく、果汁糖度は16~17%程度、果肉は緻密でなめらかな食感を有し、多汁で良食味です。さらに常温で30日以上日持ちし、「松本早生富有」や「富有」より日持ちが良好であることが確認されています。この日持ちの良さにより販売可能な期間を確保しやすくなり、流通・消費段階でのフードロス削減が期待できます。また、長い輸送期間を要する輸出においても、商品性を保ちやすい果実としての利用が期待されます。

「つきまる」の苗木は日本果樹種苗協会会員の苗木業者から購入可能です。購入を希望される場合には日本果樹種苗協会までお問い合わせください。

関連情報

予算 : 運営費交付金
品種登録出願番号 : 第36319号(2022年9月29日出願公表)
品種登録番号 : 第31015号(2025年6月26日品種登録)

問い合わせ先など
研究推進責任者 :
農研機構 果樹茶業研究部門 所長草塲 新之助
研究担当者 :
同 ブドウ・カキ研究領域 ブドウ・カキ育種グループ
グループ長東 暁史
広報担当者 :
同 研究推進部研究推進室 連携調整役三谷 宣仁

詳細情報

新品種開発の社会的背景と経緯

我が国の甘ガキ品種は、「富有」、「次郎」およびその枝変わり品種が広く栽培されています。これら主要品種は品質に優れますが、収穫期が11月の中晩生に偏っており、市場に流通する甘ガキの出荷時期や食味のバリエーションが限られています。そのため、農研機構では、「麗玉」や「太雅」など、早い時期に収穫できる甘ガキ品種を育成してきました。しかし、これらの品種は大果ではなく、収穫後も商品性を長く保つことができる日持ち性を兼ね備えた品種はありませんでした。

こうした背景から、農研機構は10月下旬に収穫でき、非常に大果で日持ちが良好な甘ガキ新品種「つきまる」を開発し、2025年6月26日に品種登録しました(写真1)。

新品種「つきまる」の特徴

  • 早生で果実が大きい高品質な甘ガキ品種の開発を目的として、大果で中生の渋ガキ「太月」に、品質良好な早生の甘ガキ「甘秋」を2003年に交配し、得られた個体の中から選抜しました。2015年から2021年まで「カキ安芸津26号」として系統適応性検定試験(全国各地の公設試験場での試作試験)に供試した後、2025年6月に品種登録されました。
  • 育成地(広島県東広島市)における樹勢は、収穫時期がやや近い普及品種の「松本早生富有」と同程度で、雌花の開花期は「松本早生富有」や「富有」とほぼ同時期です(表1)。雌花の着生は多く、雄花の着生はみられません。年により早期落果や後期落果が生じることがあります。収穫期は10月31日頃で、「松本早生富有」より約1週間、「富有」より約20日早い、やや早生の品種です。
  • 果実重は414g程度で、対照品種(「松本早生富有」や「富有」)より100g以上重く大果です(表2)。対照品種に比べて果皮の着色程度(カラーチャート(CC)値)が低く、色むらが生じやすい傾向があります。果汁糖度は16.7%程度で、果肉は緻密でなめらかな食感があり、多汁で食味は良好です。果頂裂果の発生は少ない一方、へたすき4)や汚損果5)が発生しやすい傾向があります。ただし、「つきまる」においては、へたすきは日持ちに大きく影響せず、汚損もその多くは程度が軽微であることから、商品性を損なうことは少ないと考えられます。
  • 常温での日持ち日数は36日で、「松本早生富有」より11日、「富有」より8日長く、国内流通における出荷期間の改善や輸出向け果実としての利用が期待されます。
  • 「富有」と同程度に樹上で自然脱渋するため、甘ガキ栽培が可能な地域で栽培できます。なお、表1の成績は受粉樹がある条件で得られたものであり、受粉樹の混植の要否は地域の受粉条件や栽培体系に応じて判断する必要があります。

<その他基本情報・栽培上の留意点>

  • 低日照、高湿度、果面の結露は汚損果の発生を助長するため、密植を避け、園内の通風や採光を確保することが重要です。
  • 年により早期落果や後期落果が生じることがあります。発生要因や程度は年次によって異なるため、摘蕾などにより着果量を適正に管理し、落果の低減を図る必要があります。
  • 「富有」と同程度に多く着果させると樹勢が低下するおそれがあるため、着果量はやや少なめの葉果比25程度に管理することが望ましいです。
表1 「つきまる」の育成地(広島県東広島市)における生育特性 (2017~2021年)
注)育成地(広島県東広島市)における2017~2021年の成績。同一圃場内に受粉樹がある条件で栽培した。
表2 「つきまる」の育成地(広島県東広島市)における果実品質 (2017~2021年)
注)果皮色は果頂部のカラーチャート値。
表2 つづき
注)「へたすき」の「小」「大」は各果実のすき間の大きさ、「汚損果」の「少」「多」は各果実の果皮の汚損程度を示す。日持ちは、収穫後から常温保存下で果実が商品性を保持している期間を軟化程度と外観から判定した。各区分の具体的な判定基準は、育成系統適応性検定試験・特性検定試験調査方法(2007年3月)に基づく。

品種の名前の由来

「つきまる」という名前は、親品種である「太月」の「月」を受け継ぎ、月を連想させる丸く大きな果実の外観に由来します。

今後の予定・期待

「つきまる」は、甘ガキ栽培が可能な地域で栽培でき、大果で日持ちの良いやや早生の品種として普及が期待されます。10月下旬から収穫できるため、「松本早生富有」や「富有」に先立つ出荷が可能です。良好な食味により消費者の選択肢を広げるとともに、日持ちの良さによって販売可能な期間を確保しやすくなり、流通・消費段階でのフードロス削減が期待されます。さらに、海外市場で好まれる大果であり、長期輸送にも適していることから、輸出向け果実としての活用も期待されます。

利用許諾契約に関するお問い合わせ(種苗会社等向け)

下記のメールフォームでお問い合わせください。
農研機構HP【品種の利用許諾についてのお問い合わせ】
https://prd.form.naro.go.jp/form/pub/naro01/hinshu

用語の解説

果頂裂果
果実の果頂部付近に裂け目が生じる生理障害で、果実肥大期に乾燥が続いた後に大雨が降ると発生し、日持ちが大きく低下します。育成地の調査では「つきまる」における果頂裂果の発生はほとんど認められていません。 [ポイントへ戻る]
日持ち
常温保存下で、果実が商品性を保持している期間を軟化程度と外観から判定したものです。「つきまる」は日持ちが良好で、育成地では36日と評価されました。 [ポイントへ戻る]
枝変わり品種
樹木の芽の一部に自然に生じた突然変異により、成熟期などが元の品種と異なり、その特性が接ぎ木などで受け継がれた品種です。「富有」から成熟期の早い「松本早生富有」が、「次郎」から「前川次郎」などが選抜され普及しています。 [概要へ戻る]
へたすき
果実のへた周辺にすき間が生じる生理障害で、干ばつの後に長雨が続くなど土壌水分の変動が激しい条件で発生が助長されます。「つきまる」では発生しやすい傾向がありますが、「つきまる」においては日持ちに大きく影響することはないと考えられます。
へたすき「大」と評価された「つきまる」果実 (矢印に隙間が生じている)
[新品種「つきまる」の特徴へ戻る]
汚損果
果皮表面に破線状、条紋、雲形状、黒点状に生じる汚れを指し、低日照、高湿度、果面の結露が生じやすい栽培環境で発生しやすい傾向があります。「つきまる」では破線状汚損が発生しやすいものの、その多くは程度が軽いため商品性を大きく損なわないと考えられます。
汚損「少」(破線状)と評価された「つきまる」果実
[新品種「つきまる」の特徴へ戻る]

発表論文

カキ新品種'つきまる' 齋藤ら(2023)園学研、22別1:278

研究担当者の声

果樹茶業研究部門 ブドウ・カキ研究領域
ブドウ・カキ育種グループ グループ長東 暁史

「つきまる」は、大果で丸い果形が目を引き、既存の主要品種とは異なる、緻密でなめらかな食感を楽しめる甘ガキです。やや早生で日持ちにも優れるため、国内産地の出荷期間の拡大に加え、輸出向けの利用にもつながる品種として期待しています。