社会的背景と研究の経緯
飼料自給率の向上、食品残さの利用による環境負荷の低減等を目的としてエコフィード(食品残さの飼料化)が推進されています。
エコフィードの利用においては、原料となる食品残さの化学成分や栄養特性が不明で、加えてその成分値も変動することがその利用推進の障壁の一つになってい
ます。しかし、多様な食品残さであっても、食品の種類ごとに分別して成分分析を行い、その平均値により配合設計を行うことで、適切な成分のエコフィードを生産しうることが示されています。そこで、製造副産物のような成分が単一のものや、多様な食品残さを類型化して分別を行うことで成分変動を一定以内に抑えたものを原料として、高品質な肥育豚用エコフィード生産を支援するための飼料設計プログラムを作成しました。
本プログラムとその使用マニュアルは農研機構 畜産草地研究所のホームページ(http://www.naro.affrc.go.jp/nilgs/contents/program/ecofeed/index.html)から無料でダウンロードできます。養豚農家、エコフィード事業所等での本プログラム利用により、豚の要求量を満たす、成分の変動が小さい飼料の設計と製造に活用が期待できます。
研究の内容・意義
本プログラムはマイクロソフト社のエクセルにより作成されており、要求量計算シート、飼料計算シート、飼料成分表シートによって飼料の設計を行うことを基本にしています(図1)。
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要求量計算シート
要求量計算シートに飼料給与対象となる群の平均体重、求められる一日当たりの増体量、そして頭数を入力します。そうすると体重別の要求量をもとに、群全体で必要される養分の要求量が算出されます。
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飼料計算シート
飼料原料として利用したいものを、後述の飼料成分表シートから選び、飼料Noを左端のセルに入力し
ます。そうすると対応する飼料名とその成分値等が表示されます。飼料を調製する際、穀類等配合飼料原料を利用したい場合は、その配合飼料原料についても同様に該当する飼料Noを左端のセルに入力します。飼料原料の重量を給与量として入力し、飼料設計において優先度が高いDE(可消化エネルギー)、TDN(可消化養分総量)、粗蛋白質、Ca、リジンの充足率が100%に近づくようにそれぞれの給与量を調整することで、適切な配合設計値が得られます。
- 飼料成分表シート
既存の日本標準飼料成分表(農研機構、2009)に記載されているデータに加えて、食品残さ成分表のデータを合わせたものから飼料成分表シートを構築しました。
また、オプションとして、飼料原料の総価格を最小化しつつ、豚の要求量を満たす配合設計を可能とすることを目的に、エクセルに
付属するソフトを用い、線形計画法により食品残さや飼料原料の配合割合を算出する方法をコスト最小化シートに示してあり、その利用法はマニュアルで解説しています。

図1.豚用エコフィード設計プログラムのイメージ
今後の予定・期待
これまでに分析していない新規な食品残さについても成分値を飼料成分表シートに追加して、バージョンアップしたプログラムを随時提供する予定です。
用語の解説
エコフィード
国内で発生した食品製造副産物、加工屑、余剰食品、調理残さ及び食べ残しを一定程度原料として調製した飼料。
日本飼養標準
家畜等の成長過程生産量に応じた適正な養分要求量を示したもので、最新の日本飼養標準豚は2005年に農研機構により策定されました。
日本標準飼料成分表
我が国で利用できる飼料の成分値や栄養価についての情報を、国公立および民間の機関より広く収集して取りまとめたもので、日本飼養標準によって示される家畜・家禽の養分要求量に見合った飼料の配合および給与設計を行う上で、その基礎となるものです。2009年版が2010年に農研機構により公表されました。
線形計画法
いくつかの1次不等式および1次等式を満たす変数の値の中で、ある1次式を最大化または最小化する値を求める方法。この方法を用いることで飼料の配合割合がより適切に計算できます。